/どうすれば成功し、どうすれば失敗するのか。デカルトは、理性の使い方が違う、と考えた。しかし、ロックによれば、妙な人たちだけで集まって、妙なことばかり聞いたり、言ったり、やったりしていると、理性の常識そのものがズレる。そして、ヒュームに言わせれば、我々は、そのズレた常識を妄信して、自縄自縛に陥る。/
因果など、人の信念にすぎない、と、ヒュームは言う。たとえば、円高で輸出が滞ると日本経済は破綻する、などというのは、西へ行くと大地大海のヘリから落ちて煉獄の炎に焼かれる、というコロンブス以前の中世の迷信と同様、やってみてもいない妄想にすぎず、事実としての因果法則でもなんでもない。基地が無くなればハッピーになれる、とか、資格さえ取れば仕事が見つかる、とか、世の中は、こんな妄信だらけ。そして、政治も、業者も、そういう妄信を煽って商売している。
近代では、成功する人と失敗する人がいる。だが、それは、たんに理性の使い方がまちがっているからだけではなく、その理性そのものからして、形成段階で、かなり怪しいのだ。育ちのいい人は、よい経験を積んで、穏当な常識を身につけ、無難に世を渡る。一方、運の無い人は、ハチャメチャな経験に翻弄され、そのせいで、むちゃくちゃな「常識」を妄信するようになり、その間違った「常識」で自縄自縛に陥って、本人は懸命に努力しているのに、いくらがんばっても、まったく報われない。
そもそも、成功とか、失敗とかいう観念からしてそうだ。経済的には「成功」しているのに、人間として破綻して、不幸な人生を送っている人は少なくない。残念ながら、そういう人は、なにが人生の「成功」なのか、常識的な理性の形成に失敗した結果なのだろう。いや、常識的な理性がないからこそ、経済的に成功したのかもしれない。どちらが原因で、どちらが結果か、知らないが、あまりそういう人になりたくはあるまい。
(by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。最近の活動に 純丘先生の1分哲学vol.1 などがある。)
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大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。