ロジカルシンキングブームが去ってから長いものの、ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングには大いなる誤解や形式に偏った理解がよく見られます。ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングとは何なのか?何でないのか?誤解や偏った理解を含めて概観しつつ本当に使えるやり方を明らかにしていきます。
「メガネをかけた日本人がぞろぞろと8人も米国にやってきたが、提案をすると、日本に帰って検討しますと言う。彼らはいったい何をしにきたのだ?」
「Yes、Yesと連発しながら話を聞いているので、決定したのかと思ったら、しばらくしてやらないという連絡が来た。あれはなんなのだ?」
・・・といったお話です。
元東京都知事の石原慎太郎氏が「Noと言える日本」を出版するなど、日本の特殊性を論じた「日本人論」が多数出版されていたと思います。
しかし、バブルが崩壊し、日本のプレゼンスが落ち始めた1990年代には日本企業の内部でもそれまでの日本的コミュニケーション、表現形式からの脱却の必要性が感じられていたと思います。海外とのビジネス機会の増加、国内での「一億総中流」というバックグラウンドの崩壊、「幻想としての終身雇用すら維持できない」という危機感、世代間コミュニケーションの難化といった事情があったと思います。
こういった事情によりコンサルティングのブルーブック(報告書)の形式は非常に強烈なインパクトをもって受け入れらたように思います。
また1990年代後半から米国的経営手法の本格的導入が日本の大企業を中心に起こりました。いわゆる「グローバルスタンダード」の導入です。日本はバブルが崩壊するのですが、米国は日本を研究することで、ケイパビリティ学説等が確立し見事に復活を遂げたのです。
こういった状況の中で、コンサルティング的提案の中身と形式は一定の評価を得たのでしょう。ただ、ここで誤解が生じたのだと思います。
「外資系コンサルティングのブルーブックの表現形式がそのままコンサルティング的思考なのである」という誤解です。
初期の職人的なアイデア勝負のコンサルティングの時代においては、ロジックに落とすのは、最終段階という暗黙の了解がありました。突破できるアイデアに辿りつくまでは、構文を整えても意味がない、チャートを作るのも時間の無駄だ、と。当時はワークプランすら作らなかった。
しかし、ある時期以降のコンサルティング業界では、チャート作成マシーンの役割を担うビジネスアナリスト、ジュニアのコンサルタントが、いつでも話のネタにできるようなチャートを大量に生産するようになりました。
それが、クライアントの問題を本質的に解決するかどうかは別として、ある程度の打ち合わせはいつでもできるようになりました。「伝わる形で常にまとめ続ける」という技能が彼らには叩き込まれました。
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ロジカルシンキングを越えて
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。