経営戦略構文100選(仮)/構文22:ファイブフォースモデルと基本戦略

画像: ぱくたそ

2018.03.08

経営・マネジメント

経営戦略構文100選(仮)/構文22:ファイブフォースモデルと基本戦略

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

経営戦略の基本的な内容を解説していく内容です。構文という意味はバラバラに読んでもそれなりに意味がわかって読める、定型化されているということですが、読み物としてもそれなりに読めることを目指します。

90年代や00年代のマッキンゼー出身者はSPECフレームワークを好んで用いていました。SPCに「E=経済動向」を加えたマクロ環境分析の枠組みです。産業構造にその時の景気動向を加えたものが業界/企業の収益性に影響を与えるという考え方に基づいた分析を行うためのものですね。

上記のように見てくると、戦略立案において業界構造を分析する意味合いが見えてきます。

現実の市場は完全競争市場ではありません。しかし、完全競争市場や独占市場での価格と収益性のあり方はとてもわかりやすい。完全競争市場では超過利潤はすぐに消失し、独占市場では残存し続ける。

では、自分たちが所属する業界はこれら2つの市場からどの程度離れた場所にいて、収益性はどの程度なのか?それは将来変化するのか?自社はその構造の中で、どのような戦略変数に基づいて収益性を確保しているのか?

こういったことを把握するために、ファイブフォースを使った分析を行うわけですし、大企業であれば、SPECフレームワークなどを使って業界構造分析を行うわけですね。ポーター的には、こういった実証や実務的流れの中で、企業が採用する戦略を分類していったら3つの戦略、コストリーダーシップ、差別化、集中に行きついたということなのですね。

確かに理論から実証、発展という歴史から見ると上記のような流れが必然的に見えるわけですが、純粋に完全競争市場のロジックから説明することもできます。

もっとさっぱりと話ができますし、基本戦略とのつながりもわかりやすいと思います。何も考えずに戦略を分類したところで3つに集約する作業はすごい作業量ですよね。しかし、たぶん、そういうふうに基本戦略の着想は得られていません。

3つの分類の枠組みはあったうえで、戦略をそれに当てはめていったら、概ね分類できたということだと思います。では、3つの分類の枠組みはファイブフォースからどのように出てくるのか?

今一度、完全競争市場に立ち戻って考えてみましょう。

完全競争市場には4つの特徴がありました。①財の同質性、②多数の売り手と買い手の存在、③情報の完全性、④参入、退出の自由の4つです。ただ、その前にプライステイカーの前提という概念があります。価格受容者の前提というやつですね。みんな価格は提示された価格をそのまま受け入れる。交渉は存在しない。この前提が成立するための4条件でもあると捉えられますよね。

現実には、財は同質ではなく、売り手と買い手は業界によって数が限られており、情報は非対称で、参入規制や撤退制限があるわけです。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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