経営戦略の基本的な内容を解説していく内容です。構文という意味はバラバラに読んでもそれなりに意味がわかって読める、定型化されているということですが、読み物としてもそれなりに読めることを目指します。
ファイブフォースはいいですよね。もう何度も説明したSCPパラダイムの考え方です。下記2つの記事で概論が解説されています。
経営戦略構文100選(仮)/構文11:SCPパラダイム/https://www.insightnow.jp/article/9467
経営戦略構文100選(仮)/構文7:完全競争市場とファイブフォースモデル/https://www.insightnow.jp/article/9389
今日はもうちょっと深く見て行こうと思います。
上記の記事と多少重複して恐縮ですが、まず、ポーターの出身分野である産業組織論からSCPパラダイムを説明しましょう。ポーターのコンセプトを理解するのに必須の考え方だと思います。
産業組織論の初期の知見として、「上位8社が業界売上70%以上を上げる製造業界の利益率はそうでない製造業界の利益率の2倍である。」という研究結果があります。これは当時としてはとても画期的な発見でした。
そもそも、経済学では「完全競争市場」を想定します。同質な企業が完全に平等な条件の下で競い合うという考え方です。経済学的な言葉遣いで言えば、「財が同質で、多数の売り手と買い手が存在し、情報が完全で、参入・退出が自由な市場」のことです。
経済学の知見では完全競争市場で何が起こるかは分かっていますし、1社が支配する独占市場、2社が支配する複占市場でも、何が起こるかは非常によくわかっています。数学的に正しく何が起こるかをシミュレーションできます。
答えとしては、完全競争市場では超過利潤は消滅しますが、独占市場では超過利潤は存在し続けます。つまり儲かり続けると言えます。超過利潤というのは、リスクフリーレートよりも高いリターンという意味で捉えてください。リスクフリーレートは国債のようにリスクなしで得られるリターンのことです。(国債がリスクフリーか?はここでは議論するのはやめましょう。財政ファイナンスとかテーパリングとか言い出すときりがありません)
しかし、現実は完全競争市場でもないし、1社、2社しか企業がない業界もありません。現実は完全競争市場と独占市場の中間的な市場で、場合によって寡占でありその程度が違うと言えそうです。では、現実としての寡占市場ではどのような利潤の配分構造になるのか?それが知りたくなりますよね。
つまり、「上位8社が業界売上70%以上を上げる製造業界の利益率はそうでない製造業界の利益率の2倍である。」が現実世界で起こっていることが示されたことが画期的でした。寡占的な度合いが高いこと企業収益、利益率を高まるであろうことは分かっているわけですが、現実としてどの程度なのかが分かることは大事だということですね。
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。