経営戦略の基本的な内容を解説していく内容です。構文という意味はバラバラに読んでもそれなりに意味がわかって読める、定型化されているということですが、読み物としてもそれなりに読めることを目指します。
確かに、顧客やステークホルダーの規模によってできることは違い、最適なビジネスモデルは異なります。そうすると、成長フェーズにあったビジネスモデル選択が必要ですね。そのためにMTPは野心的であり、変革をいとわないものとなるそうです。
次は共同作業のコスト削減です。多少長くなってしまうのですが、人材を惹きつける視点からイスマイルは共同作業のコスト削減までができるということを説明しています。だから、もうちょっとだけお付き合いください。
MTPが優れていれば、「優れた人材を引き寄せる」際にも役に立つそうです。そして、「成長が不安定な時期には、MTPは社内を一致団結させる」とのことです。なんと素晴らしいのでしょう。ただ、理念・ビジョンに感動して入ってきてくれる人々ならばそうなのかもしれません。
そして、エコ・システム形成に際しても有利で、優秀なパートナー企業を引き寄せたりできる、と。
イスマイルの言葉で言えば、「ステークホルダーを集めたり、維持したりでき、彼らとの共同作業のコストを下げられる」です。
つまりは、目指すもの、志が同じような人、企業が集えば、コミュニケーションコストなども下がるだろうということなのですね。ここまで積極的に理念・ビジョン的なものを評価した考え方は非常に珍しいです。
イスマイルはMTPはミッションステートメントとは違うと言って、どう違うかを延々と解説してくれていますし、MTPを総合的に機能させるための仕組みについても解説しているのでご興味がある方は「シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法」をお読みください。
いろんな例を見てきましたが、理念・ビジョンは集うメンバー、組織の価値観に影響を与えるものです。それはつまり、認知、行動の優先度を規定します。価値観とは大事なものごととその順序ですからね。
「戦略とは何をし、何をしないかだ」と言いますが、これは資源が希少だからであり、あらゆることはできない。だから大事なことだけをし、大事でないことをしないことというふうに読み替えられるでしょう。
すると、理念・ビジョンは戦略的自由度を制約するレベルの大きな優先度を示してくれるということになります。我々は何を大事にし、何をし、社会をどうしたいのか。そういったことを明らかにすることは、ドメインを規定することになり、エコ・システム/ビジネスモデルを規定することとなり、成長目標を規定することとなります。また、ブランドという視点ではブランドパワーの源泉にもなり、内外のステークホルダーを方向づけるわけですね。
今後は、さらにこういった考えが推し進められていくと思っています。戦略には理念・ビジョンの制約が必要だ、と。この理念・ビジョンレベルでの合意がないがために、戦略選択でもめるケースをたくさん見てきました。こういった知見が広がることで、多少でも価値観レベルでのメンバーの齟齬が減少し、戦略選択でもめたりしないようになることを願います。
長かったですね。ごめんなさい。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。次回をお楽しみに。
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。