経営戦略の基本的な内容を解説していく内容です。構文という意味はバラバラに読んでもそれなりに意味がわかって読める、定型化されているということですが、読み物としてもそれなりに読めることを目指します。
ホファー&シェンデルは1970年代以前の米国企業の理念・ビジョンが戦略と結びついているケースを挙げています。
しかし、理念・ビジョンという言葉自体を世界的に最も普及させたのは1990年代に出版された『ビジョナリー・カンパニー』でしょう。ジム・コリンズは卓越した業績を上げた企業と、それなりに素晴らしい業績を上げた企業を比較して、その違いは経営理念にあると主張しました。
ただ、歯切れが悪いところとしては、理念・ビジョンを社会的に素晴らしいものにしたら業績が上がると言っているわけではないことでしょうね。現状としてそういう違いがみられるからと言って、全ての高尚な理念を掲げた企業の業績が卓越したものになるのか?と言われるとそうでもなさそうなことはすぐにわかります。
そして、『ビジョナリー・カンパニー』は戦略と理念・ビジョンの関係を語っているというよりは、その組織との関係を語っています。
どちらかと言えば、組織が経営戦略の先にある考え方をしているわけです。「どこに行くかよりも、バスに乗せる人を先に決めた企業が卓越した成功を収めた」とも言っていますからね。
『ビジョナリー・カンパニー』の内容を経営戦略の側面から発展させたものに、ベイン・アンド・カンパニーの『コア事業進化論』があります。
コア事業の再定義から新たな成長軌道の実現に向けた手順を整理していますが、組織内に眠る見えざる資産に着目して企業を再成長させていくという考え方自体は、組織内にいる人々がやってきた何か、こだわりのある何か、積み重ねてきた経験や価値観などを重視するビジョナリー・カンパニーの考え方との共通点は多いでしょう。
また、『ビジョナリー・カンパニー』と似たような主張をブランド論で行ったのが、片平秀貴先生の『パワーブランドの本質』と言えるかもしれません。ブランドには魂があるというようなことを言っていますが、ジム・コリンズが研究対象とした企業と、片平先生が対象とした企業は似通っています。
片平先生の語り方で行くと、理念・ビジョンのようなものは、組織に通底しつつ、マーケティング的な効果もあると取れます。ブランドは情報が対称ではない状況の中で、ある意味で「良い先入観」を創り出すものだからですね。
では、理念・ビジョンとは何でしょうか?
研究者や論者によって言うことが違いますし、ここで新たに定義しても無価値ですので、言われていることを大まかにまとめますと、理念とはその組織の存在理由、組織の「やりたいこと」、すなわち意思です。
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。