プランニングは役に立たないか

画像: PhotosNormandie

2018.01.24

経営・マネジメント

プランニングは役に立たないか

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

計画通りに物事が運ぶことなどない。だからプランニング(計画づくり)など無駄だと公言する人たちがいる。そういった人たちは面倒がっている自分を誤魔化しているか、物事を深く考えていないだけだ。

多くの人にとって事業計画づくりは必ずしも身近ではないかも知れないが、学祭の模擬店出店計画や、地域・会社の防犯や防災の計画・訓練をイメージしてもらえばよい。各自の頭の中だけだと何が抜けているのか分からないため、一通りのやるべき事柄を紙に書き出して、気になる点を関係者で議論した経験はあろう。あれこそが計画づくりの原点だ。

防災計画を例にとれば、「〇時〇分に△△から出火し、××フロアで燃え広がった想定とします」といった仮定の通りの事態が起きるなどとは誰も考えていない。しかしああいった計画を踏まえて訓練を一度体験しておくだけで、「ああこのビルからはこうやって脱出すればいいのか」と皆が理解しておくことができ、不幸にして実際の火災が(まったく別の時間帯に別の原因で)起きたとしても、大勢の人たちが混乱なく逃げおおせるのだ。

それと同様に、事業計画づくりもやることの効用は大きく、やる必要があることなのだ。ただしやるからには、当該ビジネスの構造からどういった要素が成果を左右するかを考え抜いて、徹底的に先読みをして生じ得る障害やリスクを洗い出して欲しい。中途半端にお茶を濁すのは労力的には無駄、かつ却ってリスキーだからだ(周りを安心させる一方で、見落としが多くなるため)。

最後に付け足しを2つ。

小生は毎期の事業計画づくりは必須だと考えるが、多くの企業の中期計画づくりに関してはピントがずれていると感じる。

それは前提の置き方が中途半端なためで(中期が3年程度のスパンであるため環境変化要因を小さく捉えてしまうためではないか)、大胆な指針になっておらず、むしろ現状の延長になってしまっているケースが少なくないことだ。それなら毎期の事業計画でカバーすればいい。中計の要諦は環境変化の大胆な先読みだ。

もう一つは、事業計画づくりの前提としての事業戦略の策定・深掘りにもっと知恵と時間を掛けるべきだということだ。前の点(中期計画づくり)とも関連するが、どの事業でも環境変化はますます激しくなろうとしている。

従前の戦略を前提にきめ細かい計画づくりを進める前に、前提条件は正しいのか、そこでライバルを蹴落としてサバイバルし、顧客にもっと大きな価値を提供できるフォーカスの観点はないのか、是非とも今一度見直してからにして欲しい。

戦略がしょぼくては、いくら事業計画づくりにきちんと取り組んで準備・実行しても、優れた戦略を持つ競合には負けてしまうのだから。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/                  弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/         代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/

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