2017.02.07
組織・人材
キラキラアピールを疑え!
増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
「キラキラ」はずいぶん長い間大流行しています。社会のあちこちで勝手に目の中に飛び込んでくるフレーズ「キラキラ」。キラキラした職場、キラキラした生き方、キラキラネーム、キラキラした女子、キラキラした中年・・・どうなんだ、おい。
・エントリーシートはキラキラアピールの嵐
いよいよ就活シーズンが始まりますが、志望先企業に提出するエントリーシート(ES)の指導をしていると、出るわ出るわのキラキラの噴水です。特に理系に比べて具体的な能力などが表現しづらいという理由もあるのでしょうが、文系学生のESがよりキラキラする傾向があります。
例えば志望動機に「OB訪問でお会いした、貴社で活躍する先輩がキラキラ輝いているように、自分も社会の役に立てる仕事だと感じて志望しました」とか「キラキラ輝ける自分に成長できる職場に魅力を感じます」のたぐいです。こんな内容で私のところに持ってこられれば、徹底的に追及されるか修正されるでしょう。中身が全くのゼロだからです。
実は書いてある文言は、いいかげんな就活情報サイトや素人の書いた就職体験記などでは見かけないこともないような内容です。しかし一切そこに志望した理由はありません。それらしい響きの言葉を並べただけの中身のないアピールになります。
ESは「良い作文」コンテストではなく、採用したいという関心を惹くためのキャッチコピーであり、会社側はESを通じてしか個人としてのメッセージを受け取れない環境を説明し、それらを理解できる学生は、表現が拙いことはあっても、しっかりと会社への貢献を盛り込んだ説得力のある内容になっていきます。
・キラキラ会社
どうしてこんな中身のないアピールが出てくるのかといえば、それは会社側にも大き な責任があります。すべてではありませんが、会社自体がキラキラアピールをしていることは珍しくありません。もちろん会社案内ですから、ネガティブなことを正直すぎる表現で発信はできないでしょうが、「スタッフ全員、イキイキ、のびのび働く職場」とか「笑顔が絶えないアットホームな環境」のような表現はアルバイト求人媒体などで見かけます。
さすがに昨今はブラック企業批判があるので、こういう表現の職場がヤバいという認識は広がってきたようです。それはリテラシーの進歩ですから良いことだと思います。そうであればぜひ実際の就職においても、自らの発信をしっかりリテラシーをもって臨んでほしいのです。「キラキラ輝く自分」みたいな表現は、結局ブラック職場を疑わせるキラキラコピーであることを。
もっとも子供の名付けにおけるキラキラネームに代表される、嫌いな人から見れば異様な、好きな人から見ればファンシーなネーミングセンスをお持ちの人も一定割合でいる訳で、最後は好き好きという判断にはなります。しかし大事なのは「誰が判断するか」です。
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増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。
謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。
大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。
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