年明け早々から芸能人謝罪会見で始まった今年2016年。その後も怒濤のような有名人による謝罪会見が相次ぎました。なぜ謝罪に注目が集まったのか、その背景と謝罪に「成功」した人は誰なのか、考えてみましょう。
・2016年、謝罪の成功者は?
私は組織の危機管理とコミュニケーション戦略の視点で謝罪対応に取り組んできましたが、その目指すところは明確です。組織の危機を回避あるいは低減することです。これはこのまま芸能人など個人でも当てはまります。謝罪のゴールをどうとらえたかがその成否を分けるのです。
今年謝罪会見が多かったと感じる方は少なくないと思いますが、では一番成功した人はだれか、すぐ思い浮かぶでしょうか?
謝罪会見を開いても、すぐに思い浮かばれることのなかった人こそが成功者だといえるでしょう。たくさんの謝罪会見がありましたが、今でも思い浮かぶ人と、そんなことがあったっけ程度に、言われなければ思い出さないような人と、同じ謝罪でも見事に二つに分かれるのです。
謝罪を行う前提に、スキャンダルなど何らかのネガティブ要因があります。少なくとも今年謝罪会見をした方々は皆、自分自身でそうした要因があったことを認めています。そのネガティブ要因自体を消し去ることはできませんが、その印象を薄められるかどうかが、危機管理としての謝罪だと考えます。つまり謝罪していたことを忘れられてしまった、思い出されなくなった人こそ、謝罪の成功者なのです。
・謝罪失敗は目的の勘違いが原因
逆に謝罪会見をしているにも関わらず、いまだに厳しい環境をも引きずっている有名人の方もいます。謝罪会見でさらに批判を呼んでしまった人のほとんどは、謝罪というコミュニケーションのゴール設定を間違えた人です。
不倫の証拠(と称されるもの)があるのに否定をしてウソつきだと批判されたり、お詫びの言葉をいいながらも態度が不遜だったり、正統派清純派の立ち位置を維持しようとして会見を打ち切ったり、いずれも謝罪でなすべきことを取り違えたといえます。
逆に成功した人たちは、ネガティブ要因をさっさと認め、炎が燃え上がる前に鎮火に成功しました。真摯な姿勢で自らの非をいさぎよく認めた姿をしっかり映像化しました。
特にこの「映像化」は重要です。わかりやすいコミュニケーションのため、映像はもっとも効果的です。どれだけ筋の通った説明も、言い訳と受け取られては鎮火できません。謝罪を観客である視聴者に伝えるため、メディアを通じてわかりやすく訴えることができた人は成功し、失敗した人の発したメッセージはわかりにくく、ウソやごまかしとして伝わりました。
メディアからの厳しいツッコミは、むしろ鎮静化のためには必要なものであるにも関わらず、それを拒否したり逃げた人も、結局事態を収拾できませんでした。映像化を避け、自らが姿を現さなかった人も炎上しました。
・禊(みそぎ)の意味
芸能人・有名人の犯罪もありましたが、危機管理の視点でいえば、犯罪行為は収拾できるレベルを超えています。逮捕された有名人がどれだけ努力しても、逮捕で有罪となった人が謝罪したくらいで失地回復は不可能です。再び脚光を浴びる世界に戻るのは、刑法犯の場合は限りなく難しく、長い年月ととびぬけた幸運がなければまず復帰はできないでしょう。
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2019.07.08
2021.08.05
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。