闇営業問題は収まる気配を見せず、延焼し続けています。一方でそもそも闇営業問題と、反社勢力問題は別という冷静な意見も出始めました。結構な数の問い合わせをいただいていますので、本件について謝罪すべきかどうか、意見を述べたいと思います。
・巨大企業ゆえの油断
危機対応において何より大切なのは初動段階の対応です。いつも火事に例えますが、ボヤ段階で消火できれば笑い話で終われるものも、ボンボン延焼してしまえば当然消防車も呼ばなければならないし、何よりもはや自宅内だけで済むことはありません。
しかし消防車を呼ぶべきかどうか迷っている内に火が燃えさかってしまうというのは、正に初動対応を見誤ったことになります。闇営業事件も、当初芸人のシャレでなんとか押し切りたい甘い読みはあったのではないでしょうか。しかし不倫事件と違い、スポンサーが反応してしまったことは大きな誤算でした。
反社会的勢力との関係は、企業にとって不倫とは比較にならないデリケートな問題です。下手な言い訳ではなく、消火ができていればと悔やまれてならないでしょう。大企業である吉本興業のような組織では、そんな意識は持っていなかったとしても、危機対応や謝罪について形骸化し、いつの間にか巨大プロダクションという地位にあぐらをかいてしまっていといえないでしょうか。
一発で潰れるような弱小プロダクションと業界超大手では、危機対応への「危機感」がちがっていると、今回の事件は示しているように思います。
・初動対応にしくじった理由
そんな背景はともかく、人間のやることですから危機対応の初動においてしくじることはやはりあり得ます。よかれと思ってうやむやにしようとしたことが、返って炎上を招くことに、本来はもっと慎重であるべきでしたが、えてして大企業では「あるべき論」「あってはならない論」が跋扈します。初動対応含めてしくじった時こそ危機対応が必要なのですが、そんなことは「あってはならい」と思考停止してしまい、結局対策できないことが少なくありません。
重要なことは、流れが読めない時こそ「収拾しない」ことです。今回も早々に宮迫さんらが「ギャラはもらっていないが」という発言で収拾を図ろうとしました。しかしこんな簡単にバレるウソをついてしまえば、後でバレた時倍返しどころか3倍10倍にリスクが高まります。
「うっかりしてました」「目先のカネにめがくらみました」であれば、バカだの守銭奴だの罵倒されるだけで済んだ可能性だってあります。「ギャラ無し」という説明は「だから罪が薄い」という言い訳です。言い訳は事態収拾のために行います。これが早すぎたのです。
ひたすら自分らの卑しさ、先の見えなさなど自分側「だけ」に非を向けるべきでした。
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2019.07.26
2020.11.16
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。