芸能人のスキャンダル、犯罪、企業不祥事といったトラブルやアクシデント発生時の対応は、一歩間違えればその存続をも脅かしかねない大きな影響をもたらします。昨今の芸能人スキャンダルも、取り扱いを間違えてえんえん火が燃え続けている人もいれば、上手な火消しで早々と活動を継続再開できる人もいます。この違いは正しい/間違っているという善悪の差ではありません。
・ベッキーとゲス氏の違い
年明けからたいへんなスキャンダルとなったベッキーさんの騒動ですが、いまだかつてのような芸能活動は再開できていません。一方、その相手となったゲスのきわみ乙女の川谷さんですが、こちらも根強い批判にさらされ続けています。被害者は元妻であって、この当人お二人は加害者なので、いつまでも許されないのでしょうか?
国民的タレントで好感度がトップクラスだったベッキーさんにとって、このスキャンダルは正に芸能生命を脅かすほどの大問題となりました。結果として収束を図るはずの記者会見がさらに燃料投下となってしまい、半年たった今もレギュラー番組やCMへの復帰はできていません。危機はまだ続いています。
一方の川谷さんですが、こちらも激しい批判が続き、現在も表舞台には出ていないようです。しかしこの方、そもそも表舞台の人だったのでしょうか?昨年のNHK紅白歌合戦にまで出場するほどのメジャーになったバンドですが、決して日本中誰もが知っているような存在ではないと思います。
つまり客層がベッキーさんと川谷さんは全く違うのです。広く国民的タレントで、誰にも好かれる好感度を武器にその立場を築いた人と、知る人ぞ知るインディー系出身バンドでは、その提供する芸能・芸術の対象が全く異なります。
・お客は誰?
ゲス川谷さんへの批判はいまだに根強いものがあると思いますが、一方でコンサートやイベントを中止して謹慎しているという話はありません。元々テレビCMがあった訳でもないでしょう。スキャンダル後、現在も芸能活動を続けているのは川谷さんの方です。
それゆえ相手の女性が強い批判にさらされているのに、男の方が活動をしていることへの批判はいまだ止みません。しかしその批判をしている人は誰でしょう?
危機管理の事態収拾できわめて大切なことは「相手は誰か」という特定です。ゲスのきわみのファンであっても、今回のスキャンダルで離れた人はいるでしょう。しかし離れない人もいるからこそ、今でもコンサートや音楽番組出演は続いています。つまり世間一般ではなく、特定のコアなファンこそが「自分たちのお客」であることを、特定できているのは川谷さんということになります。
お客を握ってさえいれば、お客でない人からの批判は耐えることも可能になります。批判をしている人は元から自分たちの音楽にお金を払う人ではなく、CDも買わないしコンサートにも来ません。しかし一方のベッキーさんはそうはいきません。広い世間一般がお客さんですから、そこからの批判が止まない以上、活動再開などできず、現在に至っているのです。
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2016.09.13
2017.07.04
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。