許される不祥事/許されない不祥事の違い

2016.07.06

組織・人材

許される不祥事/許されない不祥事の違い

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人のスキャンダル、犯罪、企業不祥事といったトラブルやアクシデント発生時の対応は、一歩間違えればその存続をも脅かしかねない大きな影響をもたらします。昨今の芸能人スキャンダルも、取り扱いを間違えてえんえん火が燃え続けている人もいれば、上手な火消しで早々と活動を継続再開できる人もいます。この違いは正しい/間違っているという善悪の差ではありません。


・倫理と商売
つまり世間の批判と商売は別物。倫理や道徳に反したという批判があっても、自分の商売が継続できるスタイルのビジネスモデルと、そうでないビジネスモデルがあるということです。昭和の伝説的俳優の勝新太郎さんなど、麻薬で有罪になっても「勝新だから」と納得してしまう存在感がありました。立川談志さんも亡くなる前から放言・トラブルはしょっちゅうありましたが、「談志だから」で済んでしまう存在でした。

さすがに法律違反はもはや許されなくなりましたが、倫理や道徳といった点であれば、アウトロー的な存在感を売りにした昭和の芸能人であれば、客も認めてしまう(許してしまう)風潮があったといえます。単純に善悪だけで結果が決まるものではないのは、芸能というものがただの情報やロジックではなく、感情を揺さぶる作品だからでしょう。結果としてみれば、川谷さんがどれだけ世間から批判されても商売ができているのは、そのビジネスモデルのためです。

舛添知事の場合、自分を知事職から追い払えるのは都民ではなく、与党しかいないという制度上の特質を見抜いていました。リコールシステムの限界で、都民が知事をリコールするのは、方法としては可能でも現実には不可能というシステムの欠陥を知り抜いていたのでしょう。舛添氏のビジネスモデルでは与党が支える限り、自らの地位は安泰との判断だったと思います。

目算が狂ったのは、自らの傲慢な態度がその与党にまで批判として広がってしまったことです。与党も自分たちの選挙に影響が出てまで舛添氏を支えることはできません。舛添氏は「お客」を見誤ったと言えるのではないでしょうか。

危機の事態収拾では、こうした冷徹な分析が欠かせません。批判や炎上でパニックになれば、冷静な判断もできなくなります。ビジネスを継続したいから謝罪によって事態収拾を図るのであって、単に詫びれば済むのではありません。自分のビジネスを支える「客」が誰で、その客が自分の商売を支持し続けてくれるかどうか、その基本を押さえた上で謝罪があるのです。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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