「銀板写真」が発明されてから170年あまりで、写真を取り巻く環境はすっかり変わりました。「銀板写真」は撮影したその1枚しか残せませんでした。
今日、6月1日は「写真の日」です。
「写真の日」は、1951(昭和26)年に制定された古い記念日です。日本人がはじめて写真撮影をした日にちなみ、6月1日としたところ、後にそれは誤りであったことが判明したといういわくつきの日付です。もともと意図していた日本人がはじめて写真撮影をした日は、1857(安政4)年9月17日で、薩摩藩士の市来四郎、宇宿彦右衛門らが藩主島津斉彬を撮影したものだそうです。このことが判明してからも、日付を変更することなく6月1日のまま「写真の日」は続いています。(日本写真協会6月1日「写真の日」について)
1857年に島津公を写したのはダゲレオタイプ、いわゆる「銀板写真」でした。1839年に発明されたこの手法はフランス政府が特許を買い上げパブリックドメイン化したため瞬く間に広がり、1840年代のヨーロッパで肖像写真ブームを巻き起こしました。ダゲレオタイプは、画質はよかったものの複製ができず、非常に高価であったため、その後の低価格技術への原動力となりました。1870年代~80年代に写真の感光板は銀板から湿板、乾板へと変化し、カメラ自体も小さく、さまざまな形のものが生み出されました。それでも、1900年代に後半にセルロイド製のフィルムを利用したカメラが大量生産されるようになるまで、写真は専門家が撮るものでした。
ロールフィルムカメラやポラロイドカメラの登場によって、写真は誰でも簡単に撮れる身近なものになりました。そして、今では多くの人がフィルムではなく、デジタル写真を利用しています。デジタルカメラの高品質化も進み、スマートフォンに内蔵されているカメラでも、高品質な写真が撮れるようにもなりました。デジタルカメラが本格的に販売されはじめたのは1995年頃ですから、この20年で写真を取り巻く環境はその姿をまったく変えてしまったことになります。
インターネットの普及とほぼ足並みをそろえてデジタル写真は広まり、今や想像を絶する膨大な量の画像データが、世界中のサーバに時々刻々と蓄積されていっています。かくいう自分も、後で見るとも思えない大量の写真データをスマホやクラウドに保存しています。撮るのも見るのも残すのも消すのも、なんでも簡単なデジタル写真と、撮影したその1枚しか残せなかった「銀板写真」は完全に別物です。この世にたった1枚しかない写真を大切に、大切にしていた時代があったことを思い出させてくれる「写真の日」なのでした。
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