概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ
〈構造的にとらえる・図にする〉
ある場合には、本質的なことを構造や図で表わすこともするでしょう。
こうしたモデル化もコンセプチュアルに考えることのひとつです。
〈具体的に展開する〉
私たちはこうしてとらえた成功や失敗を現実生活のうえで生かそうとします。
具体的な行動として展開するのもコンセプチュアル思考の一部です。
〈観をつくる〉
私たちは長く生きていく間で、成功や失敗ということを図のように「抽象化→概念化→具体化」のサイクルで包括的に認識していきます。そしてやがて自分なりの「成功観」ともいうべきものを醸成します。包括的に物事をながめ、観をつくることもまたコンセプチュアルな思考によってなされるものです。
〈意味を与える〉
私たち人間は物事に意味を与える動物です。
何か大失敗をしてしまったとき、そこに何らかの意味や解釈を与えようとします。
これもコンセプチュアル思考によるものです。
〈理念を立てる・ビジョンを描く〉
どういった理念・ビジョンのもとにチームは成功を目指すのか。
リーダーにとっては大事な仕事のひとつですが、これを行なうにもコンセプチュアル思考が必要です。
このように「コンセプチュアル思考」は広い範囲の、そして深さをもった思考です。だれしも「成功」や「失敗」の辞書的な意味は知っています。しかし、それらをどれだけ深く強く豊かにとらえているかは千差万別です。試しにいま、あなたを含めあなたの周りにいる人たちに次の作業をしてもらってください。
「成功(もしくは失敗)とは何であるかを
一行の文、あるいは一枚の絵で表現しなさい」
……おそらく出てくる表現は、深いものもあれば浅いものもあり、強いものもあれば弱いものもあるでしょう。豊かな答えもあればやせている答えもあるでしょう。それは人それぞれに経験の質・量が違い、そこから「何かをとらえて意や念、観にする」というコンセプチュアルな能力に差があるからです。
本質を洞察すること、概念を形成すること、本質を豊かに応用展開すること、分厚い観を醸成すること―――これらが「コンセプチュアル思考」です。私はこの思考力を鍛錬することが、自律した個として強い職業人を育む上でとても大事なことであると感じています。
なお、「コンセプチュアル」ときくと、日本では『カッツ・モデル』で知られるロバート・L・カッツが提唱した3つのスキル、すなわち「テクニカル・スキル|ヒューマン・スキル|コンセプチュアル・スキル」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、カッツは「コンセプチュアル・スキル」について概要を述べるにとどまり、詳細を定義したり、体系化しているわけではありません(『カッツ・モデル』については、別の記事で触れることにします)。
いずれにせよ「コンセプチュアル思考」は生成途上にあります。「ロジカル/クリティカル・シンキング」や「デザイン・シンキング」はいまでこそ一般的なものとして広がりをみせていますが、最初に先駆的な提唱者がいて、それを受けていくつかの方向から概念が固まりはじめる。そうして一般的な方法論や教育コンテンツに発展していくという過程を経てきました。「コンセプチュアル思考」が世の中から真に要請されるものであれば、おそらく同じような流れで形ができていくものになるでしょう。このシリーズ記事もその流れの中のひとつの取り組みです。
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ビジネスパーソンのための新・思考リテラシー『コンセプチュアル思考』
2016.02.05
2016.02.25
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。