アルバイトといえば学生の小遣い稼ぎで、あまり当てにできない戦力。これは昔の常識。今や飲食業・サービス業を中心に多くの現場オペレーションに組み込まれており、無くてはならない存在となっているのが実態である。しかし学生の法的無知や優しさに付け込んで、とんでもない働かせ方をして恥じない連中がいるのも事実だ。彼らに対処すべきは、学生の味方である大学の事務局である。
言い換えれば、対象となっている企業の経営者には確信犯が多いのだ。現場からの悲鳴と世間の糾弾が聞こえてからは十分な時間が経っているはずだが、自分たちが直接指示をしていないことをいいことに、最後は「現場が勝手にやりました」と言い逃れができると考えているのだろう。
今年、「ブラック企業大賞」(労働相談に取り組んでいる弁護士や市民団体、ジャーナリストなどでつくられた実行委員会によって実施されている)にノミネートされている企業はその中でも「栄えある」ブラックバイト企業の代表である。
コンビニ最大手のセブン‐イレブン・ジャパン、福井県の消防・防災機器の販売・保守点検サービスの暁産業、外食サービスのフジオフードシステム、靴販売のABCマート、個別指導学習塾「明光義塾」を運営する明光ネットワークジャパン、アリさんマークの引越社関東の6社だそうだ。各ブラック業界の代表選手といってよかろう。
このうちFC傘下のコンビニオーナーの行儀の悪さへの指導が行きわたらないセブン‐イレブンを除けば皆、自らのオペレーションで起きている実態だ。「知らぬ、存ぜぬ」が通じないばかりか、世間からの非難にも耳をふさいでおり、いずれも強者揃いのようだ。
さて、一体こうした事態に対し、わが心優しい行政府はどんな対策を考えているのだろうか。約6割の学生が賃金の支払いなどでトラブルを経験していたことが初の実態調査で分かったことを受けて、厚生労働省は経団連に法令順守を要請するほか、労働法に関する高校生向け教材の作成を検討するなど、対策を強化すると発表したそうだ(2015.11.1付けの産経ニュース)。
しかしこうしたブラックバイトを実践している企業や雇用主のどれだけの割合が経団連に所属していると、厚労省は考えているのだろう。何らかの社会的罰則や強制性がなくて、その傘下に所属しているグループ企業にこうした実態の有無を探らせて、しかも矯正することができると本気で考えているのだろうか。はなはだ疑問である。
また、なぜ労働法に関する教材は、受験という人生の一大イベントを控えた高校生向けなのだろう。どう考えても、これからアルバイトに従事する意欲が満々の大学生に向けて注意を促すのが緊急かつ効果的ではないか。
この厚労省の発表とは別に、ブラックバイト対策の国会質問などで分かったことがある。文科省が全国の大学や高専、専修学校、教育委員会の担当者に対し、学生たちからの相談を各都道府県労働局が受け付けることを学生たちに周知し、大学も労働局と連携を図るよう(昨年の11月25日付)文書で要請しているとのことだ。
その他
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
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