2015.11.30
職場のウェルビーイングを考える (3) - 実践編:自己表現の機会を
おおばやし あや
SAI social change and inclusion 代表
会社としてのウェルビーイングとは、「できないこと」に注目するのではなく、その人の強みや「できること」に着目しエンパワーメントを与え、失敗やつまづきを折り込む寛容さも持つことだと著者は考えます。では、メンタルケアの問題も押さえながら、一体どのように実行すればよいのでしょうか。いくつかのキーワードと共に、方法を提案させて頂きたいと思います。
5.目標設定
状況を把握し、もしくは対話を進め、権利について考察したところで、自分の組織はどうしていけば良いか想像ができたなら、目標を設定できる段階です。離職率、勤怠や採用コストに注目したり、ストレスチェック結果、または集中力や生産性が落ちているといったアンケート回答に着目したり、対話から見えてきた「自分を活かせていない」ということを述べたり、また労働法が満たされていない部分にフォーカスしたりしながら、目指すべきところを決め、自分の組織で現実的に継続して行える中期・長期のプランを立ててゆければ良いのではないでしょうか。
付け加えるならば、この時「ひとりでやる」ということを是非避けて頂きたいと思います。「組織の問題をひとりで抱えすぎて、自分が押しつぶされてしまわない」ためです。
自分がそういうタイプだったのもあり、また仕事上で何人かの方にお会いして思ったのは、「なんとかしなくちゃ!」という意気込みを持つ、能力が高く責任感と思いやりにあふれている人は、上と下の板挟みにある中堅の立場の方が多いのですが、周囲よりもよけい多くのものを抱えて孤立してしまいがちです。組織を変えるのに、こういったやる気と情のある方々の働きは絶対に欠かせませんが、単独で動きすぎると逃げ場のないまま重圧がかかり、結局自分の心身の問題にも関わり、計画を長く実行できなくなってしまいます。
個人ベースで動いているのならまずは、同じような意志を持っている人に相談する、味方をなるべくたくさん見つけていくこと、その上で計画を練って然るべき人を説得するする、といったことをお薦めします。
こういった、変化を起こすアクションには常に反発がつきものです。自分が助けようとしている人に疎まれる、文句を言われる、ということにも常に向き合わなければなりません。(それもあり、介護職や医療関係、ソーシャルワーク関連で働く人がうつにかかる可能性が高いのかもしれません)
一緒に戦ってくれる、何かあったときに話を聴いて愚痴を言い合える、対話相手の存在は、ここでも大変重要です。
まとめ
以上が、メンタルケアを通過点としてウェルビーイングを目指す根拠、「人を活かす」ウェルビーイングの考えとは何か、また会社でどう実行してゆけば良いかという、キーワードを示しての提案でした。
生産性の低下や離職率の上昇など、うつや心の問題が起こす問題は深刻ですが、社員にメンタルケアが必要であるないに関わらず、「社員がより健康で幸福であり、やりがいや満足があることを目指す」のがウェルビーイングです。それは労働者の権利を守り、契約関係にあるものとしてお互いにフェアであるということであり、快適な環境を作り人を活かそうとすることが、最終的にはひとりひとりの健康や自由意志の尊重、そしてより良い働き、全体の成果にもつながってくるはずです。
精神医学などのスペシャリストではなくても、「今できること」にフォーカスし、できることを重ね、失敗や弱さを許容する、人の力を信じる度量があれば、おのずと問題を乗り越えるだけの強さを持てる体になっていくでしょう。
提案をさせて頂いたことは決して簡単ではないとは承知していますが、状況に変化が必要だと思うのであれば、まず「貢献したいと思わせるような会社はどんなものだろう」「週5日、350時間以上を過ごす場所というのはどういうところであるべきだろう」「自分にとっての仕事上の幸福とはどんなものだろう」といった想像をされてみてはいかがでしょうか。
主な提案は以上ですが、次回より数回、会社と就業者におけるフェアさを考えたり、エクササイズのアイデアの提案、補足的説明などをさせて頂ければと思います。
ここまでお読みくださって、誠にありがとうございました。
関連記事:職場のウェルビーイングを考える (1) - 人を活かし、組織も活かす / (2) - 「今、できること」に焦点を当てる / (4) - 「フェアな組織であること」 / (5) - スイミーで考える「犠牲にならない」フェアな社員とは
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おおばやし あや
SAI social change and inclusion 代表
Well-beingの実現をめざす起業家として、日本、フィンランドで主に労働者福祉分野で講師や研究開発者として活動。フィンランド国家認定ソーシャルワーカー。 「個と全を活かす」をテーマに、コミュニケーションツール開発や、多くの関連ワークショップ、研修を全国のさまざまな大学、企業、団体さまにて提供させて頂いています。