「講師の心.com」(http://www.koushinococoro.com/)に寄稿したコラムを転載しました。
もう一つは、正社員と非正規社員との処遇格差の問題。経験によって毎年労働の質が向上していくというのが定期昇給を行う根拠であるなら、それは正社員に限った話ではありません。そもそも、何歳になっても年々習熟度が増していくはずはないので、定期昇給は合理性に欠けており、結局、年功的賃金カーブ維持のためだけに残っている制度なのであって、これを正社員だけに適用するのは差別的処遇システムと言えるでしょう。賞与や諸手当についても、貢献度・業務内容・属性に応じた支給がなされるべきだと思いますが、実際には正社員・非正規社員という雇用形態によって支給基準が異なっており、その理由は不明確な状態です。他にも研修機会や福利厚生などに大きな差があり、この身分差別のような状態は是正されなければなりません。「入社の仕方や労働契約の形態を根拠にして処遇差を設けること」を禁じるような規制が必要だと考えます。
特権をなくせば、正社員の処遇水準は下がりますが、それは雇用が守られやすくなることを意味します。その原資が、若年層の採用や非正規社員の処遇水準向上に回れば、就職率も定着率も向上するはずです。経済界に対して首相からの賃上げ要請がありましたが、既に給与の高い中高年の男性正社員に対してではなく、低所得者に対して賃上げするほうが消費に回りやすいので、デフレ脱却に好影響を与えるでしょう。合意形成は容易ではないでしょうが、成長戦略における重要課題として、解雇規制の緩和、雇用差別の撤廃などの雇用制度改革が実現することを期待します。
高齢者の充実したライフスタイルを提言する、「老いの工学研究所」
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NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。