前回「価格情報のフリー(Free)化」、前々回「レベニューマネジメント」と「価格」の決まり方に大きな影響を与える二つの動きを紹介した。今回はこれらの動きがBtoB(企業間)取引にどういう影響をもたらすか予想していこう。
正直に言うと、前者の価格情報のフリー化の事例として紹介したGoogleショッピングのニュースを最初に見た時には、目の前が真っ暗になった。それは、この影響を真っ先に受けるのは、調達・購買担当者ではなく、我われ調達・購買関連サービス企業ではないかと考えたからだ。
Googleのこれまでの新サービスの展開を考えると、Googleが集めた価格情報は無料で公開されるだろう。彼らの狙いはあくまでも情報探索ニーズを集めて、彼らの収入源である課金型広告をクリックさせること。彼らは、基本的にこのビジネスモデルを崩さないので、価格情報そのものには課金されない。サプライヤにしても、価格情報をGoogleショッピングの検索対象にするのは無料で行え、そこからの自社サイトへのトラフィックの流入が見込めるため、積極的に掲載するインセンティブがある。えてして、このような売り手と買い手を結びつけるマッチングサイトは鶏が先か卵が先かの議論でなかなか立ち上がらないのが常だが、Googleの知名度があれば、その壁はやすやすとクリアするだろう。
それでも、なんとか気を落ち着けて考えると、違った構図が見えてくる。価格情報の比較が容易になると、メーカはまず細かい派生仕様やあの手この手でユーザの囲い込みを図ってくる。これは今まで通りだが、こうした動きがより激しくなるだろう。買い手企業としては、サプライヤが出してくるこれらのフリルに乗せられないようにしなければならない。
価格情報のフリー化とレベニューマネジメントとが進むと、力のあるサプライヤは、競合に合わせてきめ細かく価格改定を行ってくることが予想される。否、そこまでできる力のあるサプライヤしか、今後の競争には生き残れないというのが正しい見方だろう。
一方で、買い手企業にとっては、サプライヤの都合で価格を細かく変えられてはたまったものではない。企業間取引では、コストが安いこともだが、収益を安定させることも同じように重要だ。幾ら価格が安いからといって、翌月の価格が分からないというのでは、予算や売価設定がままならず、買い手によっては、多少高くても年間契約で一定の価格を保証してくれるサプライヤを好む可能性も出てくる。中間流通の復権だ。商社などで市況変動リスクを取ってくれるサプライヤの地位が高まるかもしれない。
このように、価格情報のフリー化とレベニューマネジメントとにより、サプライヤ側では、標準化どころか必要以上のきめ細かい仕様の細分化、囲い込みのためのサービスの提供、頻繁かつきめ細かい価格改定、力のあるサプライヤの生き残りといった動きが予想される。何れも、よりきめ細かい調達・購買が必要になる動きだ。
次のページこうした傾向が意味しているのは、これまでは誰でもできる...
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます