これからの「価格」の話をしよう(1)

「価格」は買い手企業からみればコストである。価格は売り手と買い手を結びつけるフックのようなもの。今後、その価格の決まり方に影響を与えると思われる二つの動きがある。少し長くなるので、今回と次回の二回に分けてそれらについてご紹介する。最初はまずレベニューマネジメントから。

■ レベニュー/イールドマネジメント(Revenu/Yield Management)

レベニュー/イールドマネジメント(以下、レベニューマネジメント)は、顧客、商品、時期をよりきめ細かく分けて捉え、それらと価格の関係を理解し、価格をきめ細かく調整することで、収益を最大化するという考え方や手法。

こんな風に書くと難しく思われるかもしれないが、閉店間際のスーパーの生鮮品や惣菜売り場に行ってみよう。日持ちがしない商品を2割、3割、時には半額以下で売っているのを目にすることだろう。そうした売れ行きの悪い、もしくは売れ残った在庫を値下げして販売し、少しでもロスを少なくするというのもレベニューマネジメントの一つの手法。ただ、実際に販売してから考えるのでは、後手々に々回り、誤って値引きしすぎたりしてしまうかもしれないので、予め、価格と収益の関係を把握した上で、収益を最大化するような値付けや施策を打てるように準備しておきましょうというもの。

たとえば、航空券の価格がゴールデンウィークなどの繁忙期には高く売られる一方で、閑散期には早期予約に割引制度を設け需要を安定させる、ホテルが予約で埋まっていない部屋を直前になって、インターネットの予約サイトを通じて格安で販売する、長期滞在顧客には割安な宿泊レートで部屋を提供するといったものがレベニューマネジメントの手法として挙げられる。

レベニューマネジメントはもともとイールド(稼働率)マネジメントと言われていたように、航空やホテルといった設備、施設サービスで発達した。そのため、これらの業界に限定されたものと考えられ勝ちだが、そんなに限定して考える必要はない。

メーカであっても、収益の改善には製造ラインの稼働率を安定させる、上げていくこと、在庫も永久に保管できる訳ではないので、適切に販売していくことが重要だ。そのため、メーカはラインの空いている時には積極的に製造受託を取りに行く、処分在庫をアウトレットで格安で販売するといった施策を行っている。在庫の陳腐化や設備の制約を受けにくい情報サービス、コンテンツの世界でも、「フリー」に見られるように、細かい製品バリエーションと無料も含めてそれぞれに応じた細かい価格設定とで、異なる市場セグメントをすべて網羅しようとしている。これらも、広い意味ではレベニューマネジメントの応用と言ってよい。

こうして見ると、「レベニューマネジメントは単なる値引き、価格政策であって昔からあった手法ではないか」「何も新しいものではない」と思われる方もいるかもしれない。なぜ、今になってレベニューマネジメントかというと、昔は、レベニューマネジメントは概念的なもので、感覚的に価格をいじっていたというのが実際だ。ところが、現在では、情報技術が発達し、よりきめ細かい顧客、商品、時期、天候などレベニューマネジメントに必要となる顧客、市場、取引の属性情報の収集、膨大な情報の瞬時に処理することで実務に用いれるようになっていること、オペレーションリサーチなど進展により顧客、市場、取引の属性と許容できる価格や購買行動のパターンの理解が深まっており、レベニューマネジメントが概念的なものから、実際に収益を最大化するための実践的な手法になってきている。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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