今年に入っての急激な円高に各企業が対応に苦慮している。この円高基調が続くのであれば、日本のメーカは更なる海外調達、海外への生産移転を考えなければならない。そうした企業の海外への生産移転に対して、技術の流出と反対の声が上がっている。難しい挑戦に反対するのは簡単だ。だが、やらなければいけないことを先送りにしていれば、問題は過ぎ去ってくれるだろうか?
海外生産、海外調達は、もともと価値を創造するものではなく、設計で創造される価値を実現するものだ。調達、生産で作られるものは、価値ではなくコストである。調達、生産でコストが抑制されれば、当然、相対的な価値は高まる。
価値創造は企業の当然の役割だ。たとえ、80円を切るような円高になってもこれは変わらない。一方で、その価値をお客様が払ってもよいと思う価格以下で届けることも企業の役割だ。それでなければ、モノは売れない。つまり、価値創造とコスト低減を両立させていかなければならない。
一つの部門で価値創造とコスト低減とを追いかけるのは難しいが、幸いなことに企業は、開発、設計、調達、製造と役割によって部門が分かれている。開発、設計は価値創造を、調達、製造はその価値の実現をより低コストでと役割分担をしながら、それぞれの役割を追求していくことで、価値創造とコスト低減の両立という難しい課題を成し遂げることができる。
グローバル競争、ハーフエコノミー、長期的資源高のトレンド、加えて円高。こうした未曾有の環境の中で、価値創造とコスト低減を両立させていくには、これまでにない挑戦を続けていくことが不可欠だ。環境が大幅に変化する中で、現状にしがみつこうとしていては、価値創造どころか、現状維持すらできない。
現状を変えないでいる事は心地良いもの。反対に挑戦に失敗はつきもの。探せば、どんな挑戦にも、必ず失敗の前例が見つかる事だろう。
現状に挑戦しなければいけない時に、関連性の薄い前例を理由に挑戦を押しとどめるのは誤りである。そうした前例の失敗の根本原因を学び、現在の環境と比較した上で、同じ過ちを繰り返さないように、その対策を新たな挑戦にどう織り込むかを考えることが正しい態度ではなかろうか?
中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長
調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・
購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。
コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます