「学生が職業や就職を意識するのが遅すぎる」ことが問題ではないか。中高生版のキャリアセンターの設置を提案したい。
大手商社が4年生の4月以降に採用活動を行なう方向になっているようで、目的は、就職活動の早期化・長期化が大学運営や学生生活に影響を与えすぎている状況を正常化することであると言います。私としてはこの目的には賛成で、就職活動が理由で授業に出られない、クラブ・サークル活動が出来ない、就職活動が学生から学ぶ機会も楽しみも奪っているような面があるなら是正が必要であろうと思います。
が、多くの人が指摘する通り、4年生になってから(それも選考はもっと遅くから)就職活動(採用活動)を行なうようにするという方法は、この状況を根本的に解決できる策ではありません。
学生は受けることができる会社の数が減るので、一発勝負の色合いが強くなり、就職に対する不安が高まるものと思います。表立って就活をする学生を見ることが減っても、学生生活に集中できるようになるわけではないでしょう。採用側にとっても、人気業界が後だしジャンケンをしますと言っているわけですから、先に内定を出しにくくなるなど採用活動が難しくなるでしょう。短期決戦になれば知名度はもちろん、人や金が豊富な大手有利の傾向がますます加速すると思います。
「何が問題か」が重要なのではないのでしょうか。企業の採用活動の無節操が大学運営や学生生活のじゃまをしていること、が問題なのかどうか。私は、「学生が職業や就職を意識するのが遅すぎる」ことを問題にしてみてはどうかと思います。社会に出て働くことを全く意識させずに放置して、いきなり職業・就職を考えさせ、選択させることにはやはり無理がある。成り行きで社会に出ても、それなりの給与を支払いながら余裕を持って育ててあげることができる会社が沢山あればいいのですが、そういう世の中ではなくなったので、やはり早いうちから意識させる必要があるのではないかということです。
本来なら子供の頃から父親・母親がそういう教育をすれば良いのでしょうが、そうもいかないのであれば、中学や高校からもっともっと本気で専門の教員や中高版キャリアセンターが職業・ビジネスを教えれば良いのではないかと思うわけです。
証券会社が将来の個人投資家を増やそうと、学校に出向いて金の運用や投資を教えているものがありますが、そういうレベルの話ではありません。公務員や大企業が安定しているようだ、○○業界や○○業界はシンドイので早く辞める人が多いそうだ、営業はノルマに追いまくられるに違いない、旅行・食品・化粧品・パソコン・マスコミなど馴染みある商品に仕事のイメージが湧く(だから人気になる)、有名企業に入ったら格好いい、大学の専攻が・・だから・・業界に行くのが当たり前、などなど余りに表面的な理由で会社を選んだりしないようにするためには、もっと早くから職業やビジネスを教えてあげる必要があるでしょう。「つぶしがきくから法学部に行ったらいい」などという教師や親の進路指導も、いい加減に止めるべきではないかと思います。
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NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。