今回も「新卒採用の開始時期」という、中途半端で表面的な話に終わってしまった。その訳と経緯について。
リクナビ、マイナビなどの新卒採用サイトが、オープンを例年の10月から12月に遅らせるようです。(日本就職情報出版懇話会においては、一旦11月としましたが、さらにそれを1ヶ月遅らせるようです。)日本経団連と大学側が話し合い、採用選考に関する広報活動の開始を12月にしようという動きを受けての対応ですが、ここまでのそれぞれの中途半端な対応は実に面白いと感じます。
今回、一石を投じたのは日本貿易会で、卒業年の夏以降に短期集中で選考をすればよいのではないかと提言しました。大学は、就職活動が原因で授業に支障をきたしており、学生の本分は勉学であるので採用の時期を見直してほしいという昔からの主張を続けており、これを産業界として受け入れればいいのではないか、という姿勢を明確にしたわけです。何となく格好いい感じがしますが、日本貿易会は大手商社など学生に人気の会社で構成された団体なので、そんなに採用に苦労していないから言えること。かえって、一斉に短期間で採用活動を行うことで他業界に勝ちやすくなるという計算も透けて見えます。
この提言の大胆さに対して、日本経団連も無視するわけにはいかず、独自の方針を打ち出さざるを得なかったわけですが、それが12月から採用広報を開始するという内容。2ヶ月だけ遅らせようということで、学生には不人気・知名度の低い業界・企業からの早く開始したいという声、大学側からの3年次の試験が終わる3月からにしてほしいという声などに配慮し、間をとったような根拠のない設定です。日本経団連会長が首相が退陣時期を明確にしないことを「言ったことをきちんと実行しないと、若い人達の教育上も具合が悪い」などと批判していますが、目配りの上で足して二で割るような結論の出し方が若い人達の見本になるとは思えません。
そして、これを受けて昨年の秋に採用サイトの運営会社団体(日本就職情報出版懇話会)が出した結論が、11月開始。日本経団連の方針通りに2ヶ月も掲載期間を短縮してしまうと、掲載料を下げるのが当然といった雰囲気になるのを恐れたのでしょう。掲載期間が1ヶ月短くなるだけなら、掲載料は今のままで営業できるのではないかという思惑です。(結局、掲載料を下げろと言う会社は少ないだろうと考えたと思いますが、12月オープンに揃えることになりました。)これに対して、国立大学協会など大学側も、残念だが一定の評価はするなどと言っているので、これまでの主張は本気だったのかと考えてしまいます。
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NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。