自分たちのような中小企業は、大企業が採用しなかったような学生しか採用できないという、いかにもプライドのない前提に立っているのは、いかがなものか。
中小企業が、自社で扱っている商品を「今、有名企業や大企業が類似商品を売っているところだから」という理由で、しばらくの間は売らないということは有り得ない。大企業がまずその商品を売ってしまった後、残りのお客様に対して遠慮がちに「ウチも似たようなモノを扱っていますので、いかがでしょうか?」などという営業をするはずがない。価格やスペックで差別化を図り、売り方や宣伝に工夫を凝らし、何とか大企業に伍していこうというのが普通の姿勢である。仕入れるにしたって、「まず大企業さんに売ってください。ウチは、そのあとで買いに来ますから。」ということなど、有り得ない。
そういう観点から見て、新卒採用について中小企業の人達がよく口にすることに違和感がある。それは、「大企業が終わってからでないと、採用が開始できない。」というものだ。確かに昔から、安定を志向し大企業に入ることを望む学生は多い。また、景気の低迷によってそのような学生の割合は、増えているようである。だからといって、中小企業が「どうせ、いい学生はウチには来てくれない」と考えて採用活動を遅らせるのは、「どうせ、いいお客は大企業からモノを買う。ウチの商品など買ってくれるはずはない。」と決め付けて、何の営業努力もしないのと同じだ。
反論は、「同じタイミングで採用活動をしても、学生は大企業を志望しているので、採りたいと思った学生がいても全員持っていかれてしまう。同じ時期に採用活動をしても労力が無駄になるので、大企業が終わってからやるのは効率の観点から正しい。営業や仕入れとは違うのだ。」ということだろう。が、営業や仕入れで通用しないような言い訳が、採用では通用するというのはオカシイ。営業や仕入れでは様々な工夫をし続けることが大切だが、新卒採用は学生が相手なので工夫をしても結果は同じで意味がない、という理屈が分らない。何より、自分たちのような会社は、大企業が採用しなかった学生からしか採用できないという、いかにもプライドのない前提に立っているのは、いかがなものだろうか。
中小企業がうまく採用できない最大の原因は、大企業と同じ時期に活動しないからである。大手採用サイトがオープンするのは、例年10月、今年は12月だが、この時期に学生のエントリーが集中する。オープンを待って一斉に学生が企業にエントリーし、その後、だんだんと減少していくのが常だ。つまり、アプローチできる学生の個人情報を大量に獲得するには、採用サイトのオープン時期からしばらくの期間がチャンスなのだが、中小企業は「大企業が終わってから採用しよう」と思っているので、この時期に掲載していなかったり、エントリーできない状態であったり、選考プロセスや日程が曖昧であったりする。なかなか応募者の数が集まらないのは、この時期をうまく捉えていないことが大きいのである。
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新卒採用
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NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。