新人に求めることという調査で、いつも上位にくる「主体性」と「コミュニケーション能力」。これらの真意、企業が新人に対して本当に求めていることを考えた。
『新入社員に求めること』というテーマで、人事やビジネスパーソンを対象とした調査が昔からよく行われるが、どれを見ても、「主体性」「コミュニケーション能力」が上位の定番で、実行力・遂行力・働きかけといった職場での行動に関することがこれに続く。時代が変わっていく中で、『新入社員に求めること』は本当に変化しないものだと思うが、考えてみれば、これらは新人に求めることというよりも、組織で仕事をしていくのであれば、階層や職種に関わらず共通して求め続けられる大切なことだ。
主体性だから、自分の意思で判断したり行動したりすることだが、若手と課長と部長と経営幹部では求められる主体性のレベルは異なる。担当する分野や責任が大きくなると、意思を持てなくなったり、判断に躊躇したりするようになる人は多い。コミュニケーション能力についても同様で、表現力が問われるようになり、言葉の重みも増してくるし、報連相も複雑で戦略性が必要な場面が多くなる。主体性もコミュニケーション能力も、組織で働く上では、難しい課題としてずっと悩み続けるような類のことであって、新人だけに求められることではない。
また、この手の調査はもともと選択肢が用意されていて、そこから選ぶので本当のことが分かるわけではない。回答者は、「新人に求めるのは、主体性とコミュニケーション能力だ。」と明確に思っているのではなく、漠然とした状態で色々と思うところがあって、何となくそれに近いニュアンスのものを選んでいるだけで、実際には誘導された結果である。顧客にアンケートをとっても、真の要望や欲求をつかむことができないのと同じだ。選択肢を用意した段階で、すでに、用意した人は想定外の解を得る可能性をほぼ失っており、対象となる人の真意を取り逃がしてしまう。
つまり、「主体性」「コミュニケーション能力」は、“新人だけ”に求められることでもないし、新人に求めることを正確に表しているわけでもない。では、「主体性」「コミュニケーション能力」「実行力・遂行力・働きかけ」と回答した人達の真意は何だろうか。私は、“気配り”“気が利く”“気働き”のようなものではないかと思う。
主体性といっても、確固たる意思を持って判断・行動せよと求めているのではなく、事の成り行きに気を配って、状況に応じて気の利いた行動をしてねといった話だろう。コミュニケーション能力も、豊かな表現力や説得力あるプレゼンテーション、的確な質問力や把握力を求めているのではなく、関係者に気配りを欠かさず必要な情報を伝えてねとか、場の様子や各々の立場・心情を汲み取って機転のきいた発言をしてね、といった意味だと思う。「実行力・遂行力・働きかけ」は、すぐに取り組む、ちょっと工夫してみる、途中で相談する、指示より早く仕上げる、そんな気働きのある行動イメージではないだろうか。
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NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。