パイロットが野球のバット製作時に発生する端材を利用したシャープペンを開発した。 着眼点はすばらしいが、その狙いが上手く伝わってこない。 今回は、そのずれの原因について考える。
当商品は、シャープペンのさやの部分に、野球の木製バットの制作時に発生するアオダモの端材が使われている。その名も「Just Meet(ジャストミート)。」
アオダモは強靱で弾力性に優れ、野球用の木製バットの材料として日本では好んで使われているが、成長が遅く、80年から100年の歳月がかかる貴重な木である。
これまでバット製作で生じる端材はあまり用途がなかったのであろう、それは産業廃棄物として捨てられていたに違いない。他者がゴミとして捨てているものに新たな用途を見出し、それを原材料として活用するのは、環境調達の王道だ。
ゴミとして捨てられていたものを資源として転用すれば、当然、資源の有効活用となる。しかも、ゴミの処分には処理費用が掛かっており、出し手にしてみれば、その処分費用が下がるのであれば、多少お金を払ってでも引き取ってもらいたいというケースもある。よって、調達側にとってみれば、安価に、時には対価を得て、材料を調達できるという経済的メリットがある。
なので、今回の商品開発のような事例はもっと普及してほしいと考えるが、商品を開発した当のパイロット社からは、どうも、あまりその意欲が伝わってこない。
作り手側の姿勢として、企業努力や工夫を、直接、声を大にしてアピールするのはどうかとは思うが、開発秘話のような形でさりげなく伝える方法は幾らでもある。
特に、今回のような環境負荷低減に対する努力には、その素材を見出すに至った過程、今までゴミとして処分されていたものを材料として転用できるようにもっていくまでの苦労、実際に今回の取組によりこれまで廃棄物として処分されていた端材がどれだけ再利用されるになったか、それによってどれだけ廃棄物が減少したか、ストーリーとして伝えるのに面白く効果的であろう要素が幾つも詰まっている。
ところが、当商品については、プレスリリースもされていないようで、同社のウェブサイトでの商品紹介でも、あまりこれらの要素について語られていない。これでは、開発者の思いはなかなか伝わらない。
当商品の価格は、小売基準本体価格で1,000円と決して安くない。恐らく、端材を利用した環境負荷低減の価値提案や、アオダモの質感を生かした高級感でのハイエンドゾーンを狙ったものと思われる。
個人的な好みもあるが、ハイエンドゾーンを狙うのであれば、「Just Meet」というブランド名とロゴはどちらかというと、野球少年向けで、この価格帯、商品コンセプトにそぐわないと感じられる。確かに、
バット製作時の端材を使ったことを訴えるために、野球に関連する名前をつけたかったのであろうが、商品コンセプト、商品、価格にふさわしいものであろうか。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます