環境ビジネスは今後の日本の成長の柱とよく言われるが、本当にそうだろうか。 マクロの視点での安易な議論に煽られて、多くの屍が残される。 そんな予兆になりそうな日本政策投資銀行の調査結果を今回は紹介する。
環境ビジネスは今後の日本の成長の柱とよく言われる。6月に閣議決定された新成長戦略でも7つの成長分野の一つとして環境エネルギー分野革新、グリーン・イノベーションが真っ先に挙げられている。
グリーン・イノベーションの中身として取り上げられているものを見ると、再生可能エネルギー、蓄電池、次世代自動車、火力発電所の効率化、情報通信システムの低消費電力化、モーダルシフト、省エネ家電、エコ住宅、ヒートポンプ、LED や有機EL などの次世代照明などがある。
確かにこれらの市場は伸びるだろう。ただ、これらは既にある化石燃料、ガソリン自動車、発電所、IT、トラック物流、家電、住宅、給湯器、照明の置き換えに過ぎない。これでは、これまでの産業の需要が新しい産業に移るだけでマクロ的な意味での成長すら難しい。
確かに、スマートグリッドの構築、資源リサイクルなど日本がこれまで取りこぼしていた需要を取り込むような産業も含まれている。しかし、多くの企業が今後の成長分野と見ているのは、電気自動車、太陽光発電のようだ。
日本政策投資銀行が8月に発表した今後の成長分野についてのアンケート調査の結果で参入を検討している分野として挙げられていたのは、電気自動車が回答企業1,430社の27%にあたる386社でトップ、次いで太陽光発電の372社、医療・介護関連の355社となっている。
1,500社の回答企業の中からだけでも1つの市場に400社近く参入する。この統計が日本企業の平均的な企業行動を表しているならば、ここに挙げられた市場に日本企業の約1/3がこぞって参入することになる。
自動車は裾野が広いのでもう少し細かく見ると、輸送などの利用も含めた完成車市場に41社、蓄電池に71社、部材に54社となっている。こうしてみると、幾ら裾野が広いとはいえ、蓄電池のような有望市場には多くの企業が殺到することになるのが分かる。
現在は競争の苛烈さが増し、殆どの産業で一強百弱の世界となっている。加えて、電気自動車関連の市場は、新しい市場というよりは、ガソリン車、ガソリンからの置き換えとなり、これらの産業に携わる既存企業は、根幹となる主要事業が先細りとなる中で、生き残りを賭け、異業種からの参入者以上に必死になって死に物狂いで新しい市場を抑えにかかるだろう。
こうした事態に陥ってしまうのは、新規事業の参入の基準がどの企業も画一的でかつ静的であるからと思われる。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます