川崎市は、多摩川河川敷で行われているバーベキューについて、それによって生じるゴミ処理や騒音などに対処するため、バーベキュー利用について課金する社会実験を行うとのことです。 今回はその取組を例に、環境負荷がなおざりにされやすい外部不経済の側面と、その是正についてご紹介します。
これは、新たにバーベキュー施設を設けてということではなく、河川敷の利用そのものに対して課金する試みです。
このバーベキューで生じるゴミ処理や大音量での音楽演奏への対処は、典型的な「外部不経済」と呼ばれる問題です。人や企業には、直接関係を有していない第三者や地球環境に損害や不利益を与えても、それを無視する傾向があります。時には、そうしたツケを第三者や環境に転嫁することで、不当にその取得コストを引き下げ、利益を得ようとします。これは悲しい人間の性で、そのため、市場原理だけではすべてのものを解決できないと言われるゆえんでもあります。こうした行為による第三者や地球環境が受ける損害や不利益が外部不経済です。
外部不経済を是正するには、そのコストの内部化、つまり受益者に正当なコストを負担させる必要があります。
これまで多摩川の河川敷で行われているバーベキューで生じるゴミや騒音への対処には市費が投じられてきました。つまり、河川敷を利用していない人も含めた川崎市民が税金という形でそのコストを負担しており、それが外部不経済という訳です。
川崎市の社会実験の概要は、9/1から30まで河川敷の利用時間や利用方法に制限を設け、河川敷の入り口で小学生以上から一人当たり500円を徴収するというものです。利用者の多い土日・祝日には警備員を常時約10人配置するとのことです。
せちがらい世の中でしょうか?
「いいじゃん、河川敷の利用ぐらいケチケチするな!」
「どうせ河川敷は無料なんだから」でしょうか?
繰り返しになりますが、河川敷の利用コストは無料ではありません。環境負荷のコストは見えないだけで、コストは厳然として発生しています。
個人的には、自由な競争がイノベーションを生み、人々の生活を豊かにすると考えており、市場主義、規制反対派です。市場への行政の介入や規制は民間により問題が解決できない時の最後の手段にすべきと考えていますが、今回の川崎市の河川敷でのバーベキュー利用への課金は仕方のないことかと考えます。
ただ、規制には、今回の例でも、柵を設けて河川敷のアクセスを制限したり、警備員を配置してルールを徹底させなければならないなど、その導入が余計なコストを生じさせ、非効率が生じます。
ですので、本来であれば、規制や行政の介入が必要ないよう、市場の参加者が自発的に正しい行動を取っている方が効率的なのですが、人間必ずしもそうならないのが難しいところです。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます