評価が良かったり悪かったりして入れ替わり、その結果が処遇差となって反映されるのであれば、競争が起こり、やる気や危機感が醸成されやすくなって成果主義は当初の狙い通り機能したはずである。
だとすると、成果主義が機能しなかった理由は、育成とセットで処遇システムを導入・運用しなかったことではないかと考えます。配置換え、役割の見直し、研修、日ごろの指導などを通じた人材育成への取り組みを軽視したままなので、評価の良し悪しはいつも同じようなものとなり、結果として処遇格差が動機付けとして機能しなかったということです。
もちろん成果主義の導入当初は、より良い処遇を求めて各々が自主的に学び、成長しようとするのではないかという期待もありました。しかし、給与が何倍にもなったり、クビになったりするほどの差がつくわけではないので、そうはならなかった。
成果主義は日本にそぐわないのだとか、日本的成果主義とは何かとか、実は欧米は成果主義ではないのだ・・・とか、様々な議論が出ていますがいずれも人事制度の範囲内の議論です。そうではなく、人材育成の仕組みや注力度合いを変えずして処遇システムだけ変えたことが問題ではなかったのか、というのが私の考えです。
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NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。