サッカー日本代表の本田選手の無回転シュート。W杯予選最終戦のデンマーク戦で、日本を勝利に、そしてW杯決勝トーナメントに導きました。 実は、本田選手の無回転シュートの裏には、資金力の豊富な大企業とそれには対抗できない中小企業との別の戦いがありました。
しかし、ミズノは、「無回転シュートを蹴ろう」というコンセプトで、本田選手のキックを分析し、2年がかりで開発した回転のかかりにくい素材のパネルを、無回転シュートを蹴る位置に配置したモデルを中心としたマーケティング、営業を展開しています。大会や有力各国代表のスポンサーシップを獲得するのに比べれば、この開発、マーケティングに掛かる費用はかなり少なく済んだことと推測されます。それでも、本田選手のW杯での活躍により、ミズノは、普通に日本代表などのオフィシャルスポンサーなどになるよりも、より強力な追い風を得ていることでしょう。
投資からのリターンは基本的にリスクに応じて決まります。高いリターンを得ようと思えば、それに見合ったリスクを負うか、逆張りで周囲が不当に評価していないものを見出すしかありません。順張りで皆が評価しているものの中から、高いリターンを得ようとするのは非常に難しいのが実際です。しかし、一見、安全策と思われるものに投資するのは、リスクが過小評価され、リターンが不当に抑えられていることが多くあり、実はハイリスクローリターンであったりします。財政破綻前の国の国債がこの典型例で、投資ファンド、ヘッジファンドはこうした市場の歪みに対して、逆張りでさや取りするのが常套手段です。それは、順張りで市場の成長に賭けるより、市場の歪みを見つけ、それに賭けた方が、手っ取り早く確実に儲かるからです。
逆張りはリスクが高いように見えますが、少ない投資額で大きなリターンを得ることができますので、投資額つまりリスクの総量を抑えることができます。全体のリスク総量の観点からは、逆張りは、同じ額のリターンを求めて多額の資金を一つの安全策に注ぎ込むより、リスクの低い戦略といえます。
資金力が乏しく、大企業のように総張り戦略が取れない中小企業にとっては、商品開発投資、広告宣伝費などのリスクの高いものについては、今回のミズノのように、予算の使い道を絞り込んだ上で重点投資する「1点集中突破」、実績ではなく「これからの可能性への逆張り」が、非常に費用対効果の高い調達戦略です。
中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長
調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。
コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます