タイトルだけだと誤解されるかもしれませんが、事業仕分けへの批判ではありません。 事業仕分けは、企業で用いられている支出管理、コスト削減、経費削減の手法の典型的なものの幾つかと重なりますが、あまりにも基本的な故に応用が利きます。 これから数回、事業仕分けを題材にそれらの手法を整理してご紹介します。所属する企業、行政、非営利団体などでお使い頂ければと存じます。 初回の今回は「(1)意義を確認する」です。
4月から5月にかけて独立行政法人や政府系の公益法人が行う事業についての事業仕分けが実施されました。これまで行政の仕事にはなかなか厳しい目が向けられなかったので、対象となった事業の廃止や規模縮小、見直しが次々と打ち出されました。
厳しい競争環境に晒されている企業では、これほど簡単に見つけ出されるようなムダはなかなか残されていないかもしれませんが、反対に、事業仕分けでは、初歩的な故に、ムダな支出や支出管理の手法の典型的なケースの宝庫です。今回から数回に分けて、事業仕分けに見られる支出管理の典型的な手法を整理していきましょう。
例えば、今回廃止判定されたものの一つに女性誌にターゲットを絞って、原子力・エネルギーに関する記事広告を掲載する事業があります。この事業は、あるアンケート調査(2005年12月「エネルギーに関する世論調査」内閣府大臣官房政府広報室)で原子力発電について「積極的に推進していく」「慎重に推進していく」の合計が、男性で60%、女性で51%となったことを根拠に、女性層が日頃目にする雑誌に原子力・エネルギーに関する記事を掲載することで、女性層の原子力に対する理解を深める機会を提供する必要があるとの事で、年間約1,000万円が2007~2009年に掛けて使われていました。
資金使途は、女性に向けたセミナーを開催し、女性誌ESSE(53~60万部発行)に見開き2ページで2~4回の出稿に充てられていました。ちなみに、提出資料ではセミナーと記載されていますが、セミナーの内容は、「電気のふるさとの女性による料理教室&エネルギートーク」、はい、料理教室です。料理教室の参加者は、2009年は2回開催され13名と20名、2008年と2007年の数字はなぜかありませんでした。
原発推進政策のために料理教室。確かに、これまでの行政では考えられ
ないようなクリエイティブな政策です。でも、
- 料理教室で原発推進政策の理解が深まる?
- 60万部発行雑誌に掲載とはいえ、どれだけの人がこのPR記事を読む?
- 記事を読んだ人がどれだけ原発推進政策の意義を理解し、サポートに回る?
- 多くの女性の支持を得たところで、原発推進政策の問題は解決される?
- そもそも原発推進政策の課題は、男性・女性の合計で推進派が55%、女性で51%ということが問題?
疑問がつきません。事業仕分けでも、こうした疑問が提示され、廃止判定となりました。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
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