世の多くの企業が、「何が本当に環境負荷の削減になるんだ」「環境負荷と経済性どう両立させればいいんだ」と悩んでいることと思います。 今回は、その答えになるかもしれない、東レの環境負荷のライフサイクルアセスメントツールの本格展開をご紹介します。
東レは、このたび、環境負荷のライフサイクルアセスメントツール「T-E2A(ティー・イー・ツー・エー、TORAY Eco-Efficiency Analysis)」を開発し、全事業系列でその運用を開始したとのことです。
T-E2Aは、複数の製品やプロセスを、「環境負荷」と「経済性」の両面から比較評価できる分析ツールとのことで、1)製品ライフサイクルで発生する約800種類の環境負荷項目の定量化、2)製品・サービスの生産段階にとどまらず、使用・廃棄段階の費用を含めてライフサイクル全般に掛かる経済的負担、ライフサイクルコスト(LCC)の定量化、および3)環境負荷と経済性それぞれにおける削減寄与度を試算し、見える化する機能を持つのが特長とのことです。
今後、同社はT-E2Aによる分析結果を、新素材・新製品の研究開発、生産、マーケティング、投資判断や事業戦略の策定など経営判断の指標として活用し、本格的に展開する、そのために、現在、T-E2Aによる分析作業の迅速化を図るため、全社環境情報の集積化と一元管理を行う東レLCMネットワークシステムの構築を進めているとのことです。(出所:2010年3月18日 同社プレスリリース)
凄い取組みです。是非、環境負荷と経済性のそれぞれの側面において、原料から使用・廃棄段階のどこまでのプロセスをどれだけのメッシュで捕捉されているのかお伺いしたいです。
これは、皮肉でも何でもなく、純粋に、これらが非常に難しい事だと感じているからです。たとえば、単純に、経済性を見てみましょう。あなたの会社の商品・サービスのアイテム単位でのライフサイクルコスト、ご存知ですか?お客様での利用、廃棄に関わるコストまで、なかなか把握していませんよね。それでは、もっとシンプルに、お客様への提供までではいかがでしょう?アイテム単位で、マーケティング、営業、物流コストを把握しているケースはまれではないでしょうか?それでは、更に簡単にして、アイテム単位の実際の製造原価はどうでしょう?設備償却、副資材、間接人件費など、結構、実際原価ではなく、売上高や数量に応じて、ざっくりと配賦されていることが殆どではないでしょうか?
商品・サービスのライフサイクルコストを把握する方法として、コンセプトとしては、その商品・サービスに関わるすべての活動を洗い出して、それらの活動一つ一つのコストを明確にし、その合計によってライフサイクルコストを明らかにするABC会計(Activity Based Costing、アクティビティベースドコスティング、活動基準原価計算)という考え方はありますが、実際には、個々のライフサイクルでの活動は、商品・サービスと1対1で対応していないことから、商品・サービス毎どころか、すべての細分、例外ケース毎に活動を分けなければならず、自社内だけでもその作業量が膨大になること、取引先も含めると更に作業は膨大になる上、データそのものをそのレベルで保持している会社が少ないため、外部からの入手は不可能に近く、日常の意思決定に用いられているケースはあまり聞いたことがありません。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます