広島大学の彦坂正道特任教授と岡田聖香博士研究員らは、鉄よりも強くかつ安価な汎用プラスチックの製法を開発しました。 今回は、この開発がもたらす環境経営へのインパクトについて考えます。
広島大学の彦坂正道特任教授と岡田聖香博士研究員らは、比強度(重量当たりの引張破断強度)が鉄鋼の2~5倍、アルミニウムの6倍、引張強度が従来の汎用プラスチックの約7倍、それでいて、安価で、水に浮く軽さで、リサイクルが可能なプラスチックの開発に成功したとのことです。(出所:広島大学 お知らせ)
これまでも鉄やアルミの代替材として、エンジニアリングプラスチックやガラス繊維や炭素繊維を複合させた繊維強化プラスチックが開発され、自動車部品や飛行機の構造材に用いられてきましたが、価格が約1万円/kgと高価であることや、異なる材料を混ぜ成型することからリサイクルが難しいことなどが壁になり、適用範囲が限定されていました。
しかし、今回開発された技術は、汎用プラスチックのポリプロピレンの結晶化度をほぼ100%に高めるという製法に関わるもので、この製法によれば、金属以上の強度を持つこのプラスチックを、既存のポリプロピレンと同様の百数十円/kg程度で生産でき、加えて、複合材料がないことから、高率でリサイクルが見込めるとのことです。つまり、エンジニアリングプラスチックや繊維強化プラスチックの長所を生かしつつ、その欠点を克服した素材と言えますので、これは、かなりの製品への適用が見込まれる技術と考えられます。
LeanでGreenな環境経営の観点で見ると、これは画期的な技術です。環境負荷低減の大敵の一つに「重量」があります。たとえば、自動車の開発におけるテーマとして軽量化、重量50%削減といったものをよく聞くかと思います。自動車の場合、軽量化は、燃費というお客様が評価する性能にも影響を与えますが、もう一つ、製品重量は、運送や荷捌きといった「物流費」にも大きく影響を与え、モノ・サービスの提供コストに直結します。今回開発された製法によるプラスチックは、比強度が鉄鋼の2~5倍、アルミニウムの6倍とのことですので、これらの素材で作られた製品をこのプラスチックで代替し、同じ強度を求めるのであれば、重量を1/6~半分にすることができます。理論的には、トンキロで運賃契約されている時には、輸送費を同じ比率で削減できます。
また、今回の製法で作られたプラスチックは、ガラス並みの透明度とのことです。プラスチックの成形が容易、割れにくいといった特性を考えると、金属の他にガラス製品の代替原料にも、このプラスチックを適用できるかもしれません。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます