経営課題の重要事項として「顧客満足」の向上・達成を掲げる企業は多い。 だが、全ての顧客を満足させる事は難しく、また、顧客が満足する要件と、その他の経営課題のベクトルは必ずしも一致しない。
企業は何らかの理由で顧客の利益と相反する選択肢を提示しなければならない時がある。
例えば、何らかの理由で製品・サービスの値上げをしなくてはならない場合などもあろう。
値上げは確実に顧客の利益と相反する。値上げに対して顧客は最悪、離反行動をとる。
そうならなくとも、不満の意を呈する。「顧客満足」とは程遠い状況になる。
斯様な事態を回避するなら、「値上げ」を上回る便益、もしくは付加価値の提供が有効だ。
顧客にとって明らかに新たなメリットとして認識されれば災い転じて福となす。顧客満足につなげる事ができるかもしれない。
しかし、世の中そんなに甘くない。都合良く新たな便益や付加価値が用意できるケースは少ないだろう。
だとすれば、「何故、値上げをしなくてはならないのか?」というように、顧客に不利益を与えなくてなならない自体になった経緯を懇切丁寧に開示し、理解を得る事だ。
例えば、食品メーカーが原料費の高騰で相次ぎ製品の値上げ、もしくは容量の減少に踏み切っている。
しかし、特定メーカーや製品の不買運動などの動きは今のところ出ていない。
バイオ燃料の需要急増によって、家畜の飼料や食品原料の生産にまで影響が出ているという説明がきちんとなされ、生活者の理解が得られているからだろう。
「満足」しないまでも「納得」が得られているという状況なのだ。
上記のような、世間一般での共通認識がある場合はまだいい。
だが、世間ではどうにも不思議な弁明の辞が企業から送られてきたレターやメールに散見される。
さしたる理由も示されず、「悪しからずご容赦ください」「よろしくご理解賜れますようお願い申し上げます」等々とある。
せいぜいが「諸費用高騰の折」と値上げの理由が書かれている。何の費用だ?
何かを依頼すると「ご要望の件、承りかねますので、ご理解賜れますようお願い申し上げます」。無理無体をいっているつもりはないのに理由が分からない。
そんな経験をした読者の方はいないだろうか。
繰り返すが、全ての顧客を満足させる事は難しい。大切なのは、満足できないまでも「納得」してもらう事だ。
そのためには、きちんと説明責任を果たす事が最低条件。その説明に合理性が求められるのは言うまでもないのである。
企業経営課題に「顧客満足」を掲げるのはいい。
だがそれは「顧客の納得」の先にあるのだ。
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2007.11.06
2007.12.13
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。