調達・購買にも360度評価

2010.01.26

組織・人材

調達・購買にも360度評価

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

以前「調達・購買業務のパフォーマンスはコスト削減額で測ってはいけない」とお伝えしました。それでは、調達・購買業務をどのように管理していけば良いのでしょう。今回は、調達・購買業務の特性を踏まえて、一つの切り口として、調達担当者の360度評価という考え方を紹介します。

加えて、取引先候補や社内との仕様、取引条件などの調整は、調達の成果に大きく影響を与えると共に、非定型業務のため、個人差が結果に大きく影響を与えます。

取引先候補、関係部門を対象に、調達担当者の調整能力について360度評価を実施する事で、それについての客観的な情報が得られます。

しかし、360度評価も他のツール同様、万能でありませんし、使い方を誤れば、効果が出ないどころか、逆効果を与える事もあります。実際に、GEで成功しているからと、安易に360度評価を導入した企業で、正しい評価情報を得られなかったり、360度評価の結果のみを頼りに誤った人事効果を行ったりといったケースが重なり、360度評価に批判的な意見も少なくありません。

このように、360度評価は古くからある考え方ですが、なぜ、今になってご紹介したかというと、最近、360度評価を導入して躍進をはたした企業の評価制度設計・導入責任者の方のお話を伺う機会があったからです。

この企業は、売上は200億円程で、パチンコやカラオケ、飲食などの娯楽施設を複数店舗展開しています。パチンコやカラオケなどの娯楽施設運営は、俗に3K業種といわれるきつい職場ですが、毎年リクナビで約1万人がお気に入りに登録する人気企業で、この数字は、一部上場の有名外食チェーンや全国展開をする大手小売業など、他の多くの大手企業を上回っています。

同社が3K企業にも関わらず、多くの人材を惹きつける理由の一つに、能力主義の徹底がある事が、採用された新卒のアンケートから明らかになっています。

能力主義を標榜する会社は多くありますが、その裏づけを明示できる企業はあまり多くありません。同社は、360度評価を軸にアルバイトも含めた人事評価制度を作り上げ、実際に顧客を中心とした組織を作りあげている事が採用応募者、社員から評価されているようです。

同社の人事制度のお話を伺っていると、娯楽施設運営というよりも、コンサルティング会社などのプロフェッショナル組織に近いと感じました。プロフェッショナル組織と公正な能力評価は一体不可分です。調達担当者の能力を正しく評価する事は、彼女/彼らを調達・購買プロフェッショナルとして育てていくための第一歩です。

この責任者の方の話をお伺いしたのは、同社がこの360度評価システムを、導入・活用コンサルティングと合わせ、SaaSサービスとして外販するとの事で相談に乗ったのがきっかけでした。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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