トヨタ自動車は、系列の部品会社に対し、部品価格を3年間かけて平均3割、一部の部品には4割の引き下げを求めている模様です。トヨタは、弊社が申し上げるまでも無く、世界的にすばらしい会社ですが、こと調達に限って言えば、トヨタは真似すべきでない、真似をするのであれば最後に参考にすべき会社だという事を明らかにします。
トヨタ自動車は、系列の部品会社に対し、部品価格を3年間かけて平均3割、一部の部品には4割の引き下げを求めている模様です。(出所:2009年12月23日 中日新聞、フジサンケイ ビジネスアイ)
最初にこのニュースを見た時には、通常の開発購買の話かと思ったのですが、多くの新聞が「値下げを要請」と報道している事から、あくまでも推測ですが、今回のトヨタの要請は、開発購買への協力、コスト低減目標の共有ではなく、協力のお願いという形での一方的な目標購入価格の通告だったのかもしれません。何れにしても、もっと違う文脈の記事を期待していたので、ちょっとがっかりです。
今回の話が開発購買なのか、一方的な価格引下げの要請なのかという事はあまり問題ではないのですが、この機会を捉えて、調達においては、トヨタの真似は一番最後にすべきという話をさせて頂きます。
トヨタは、弊社が申し上げるまでも無く、世界的にすばらしい会社です。弊社でも、その経営哲学、カイゼン、平準化、JIT、自働化、品質の工程内でのつくり込みなど、多くの考え方を参考にしています。
しかし、こと調達に限って言えば、弊社では、トヨタは最後に参考にすべき会社だと考えます。なぜなら、トヨタの取引先選定・管理は、調達とは根本的に対立する思想が根底にあると思われるからです。
調達の価値の源泉は「自由」にあります。取引条件を選べる、取引先を選べる、仕様を選べるなど、これらの自由度が高ければ高い程、様々な打ち手が考えられ、その中から貴社にとってベストなものを選ぶ事ができるようにするのが「調達」です。仕様の標準化のメリットの一つは、標準化する事で調達先を多様化する事であり、調達先の多様化は、ある工場でのライン停止などの供給リスクの回避にもつながります。開発購買は、素材や設計など、仕様の制約を外して自由にそれらを見直す事により、より良い価値の提供方法を見出していく手法です。このように、調達でベストプラクティスと言われている手法の多くが、いかに自分を「自由」の立場に置くかという事を念頭に生み出されてきている事が、調達の価値の源泉が「自由」にある事を証明しています。
一方、トヨタの取引先選定・管理の背景にあるものは、「統合」と考えられます。聞いた話なので、真偽の程は定かではありませんが、トヨタでは金額として8割は相見積を取っていないとの事です。サプライヤの原価が正確に把握できれば、後は適正な利益を乗せるだけで適正な購入価格が算出できるという考え方に基づいての事です。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
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