ドラマ『坂の上の雲』にあって、『不毛地帯』にないもの。

2009.12.12

ライフ・ソーシャル

ドラマ『坂の上の雲』にあって、『不毛地帯』にないもの。

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

どうしても見比べてしまうNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」とフジ開局50周年ドラマ「不毛地帯」。政権交代後の混迷の時代に放映されるドラマとして、両者ともに意義があるし、良い出来映だと思う。・・・が、どちらかというと「坂の上の雲」に肩入れしてしまう。どうしてか?

全国的に見ても肩入れ度合いは、NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」に歩があるようだ。

「不毛地帯」の視聴率は、
第1回 14.4%
第2回 11.1%
第3回 11.6%
第4回  9.9%
第5回 11.8%
第6回 10.7%
第7回 10.6%
第8回 11.4%
10%を少し超えたところに留まっている。
一方「坂の上の雲」は、まだ、2回だけの放送なのだが・・・
第1回 17.7%
第2回 19.6%
20%超えも目前、単純に「不毛地帯」の約2倍である。

1回目から2回目への視聴率が、「不毛地帯」が3%下げたのに対して、「坂の上の雲」は、2%の上昇を示している。そのプラスマイナス5%の差は、全体で10%に。この10%の違いは、意外に大きい。それこそが、今の日本国民の意思ではないかと思う。

例えば、この夏の政権交代が起こった衆院選挙。自民と民主の得票数を4年前の郵政民営化選挙と、比較して見ると・・・・
【小選挙区】 定数300名の議席獲得における獲得票数の移動は下記のようになる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
自民党 :獲得票48%(226議席)→ 獲得票39%( 64議席)
民主党 :獲得票36%( 54議席)→ 獲得票47%(221議席)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
全体の10%の人達の行動の変化が、政権交代という大きな時代の流れを作ったことになる。
「坂の上の雲」と「不毛地帯」の間に生まれた視聴率10%の差にも、読み取るべき意味がある。

「坂の上の雲」が、「偉大な明治の政界」を描いているとしたら、
「不毛地帯」は、「闇の昭和の財界」を描いている。

「坂の上の雲」は、「軍師」の物語であり、
「不毛地帯」は、「策士」の物語である。

「坂の上の雲」にあるのは、「希望」であり、
「不毛地帯」にあるのは、「疑心」である。

「坂の上の雲」の主人公たちは、「出会い」に喜々とし、
「不毛地帯」の主人公たちは、「別れ」に苦悩する。

「坂の上の雲」からは、「日本が戦争を始めた理由」を知ることができ、
「不毛地帯」からは、「日本が敗戦を処理しきれない理由」を知ることができる。

のぼっていく坂の上の青い天に
もし 一朶の白い雲が輝いているとすれば
それのみを見つめて 坂をのぼっていくであろう。


(司馬遼太郎「坂の上の雲」序文より)
このナレーションに単純に、心が震える。経済的には、辛い時代である・・・でも、坂の上に何かあるかもしれないと思えたら、明日の朝も、仕事に行こうかなという気になる。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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