あなたは、百貨店統一ハンガーリサイクルシステムをご存知ですか? 今回は、百貨店統一ハンガーリサイクルシステムの成り立ちを見る事で、LeanでGreenな事業をいかに構築するか、その過程に立ちはだかる壁やそれをどう乗り越えていくかについて学びます。
百貨店統一ハンガーリサイクルシステムは日本百貨店協会、日本アパレル産業協会、統一ハンガー協議会のユーザ、メーカ、回収・処理企業の三団体による、百貨店で用いられるハンガーのリサイクルシステムです。
百貨店の店頭に並ぶ洋服は、配送時にできるしわ防止のため、一着一着ハンガーに掛けて納品され、売り場で各店のハンガーに掛け替えた上で陳列されていました。 納品時に使用されたハンガーは、プラスチックゴミとして各店で廃棄されていました。
91年、ハンガーメーカ日本コパックの斎藤社長は、東京・夢の島を見学した時に、埋立場で積み上げられたハンガー。その光景に意を決し、ハンガーリサイクル事業を開始しました。
翌年には大手チェーンストアの賛同を得てハンガーのリサイクルを開始、95年には日本百貨店協会、日本アパレル産業協会などと、リサイクルを推進するハンガーBPR協議会に参加。ハンガー業界でも統一ハンガー協議会を設立し、そこで「百貨店統一ハンガー」規格を制定した所、全国の百貨店にもリサイクル事業が広がり始めました。
百貨店統一ハンガーは、規格を統一する事で、流通から店頭ディスプレーまで同じ一本のハンガーを使用します。 形状は百貨店とアパレルが共同で開発し、紳士・婦人の各アイテムに合わせて約30種類に集約。 商品販売後、店頭で不要になったハンガーをリフォーム工場に送付、洗浄・メンテナンスの後、再びアパレルメーカに納品という仕組みです。
百貨店統一ハンガーのスタート当時は、全国の百貨店で廃棄されたハンガーは年間約5,000万本、4tトラック換算で約2,500台に上りましたが、2007年には、約2,000万本の統一ハンガーが出荷され、統一ハンガー協議会の試算によると、このシステムにより10年間で削減できた廃棄ハンガーは1億5千万本、4tトラック換算で7,500台に及びます。
ハンガーリサイクルシステムは、百貨店だけではなく、量販店にも広がっており、また、小売店舗向けには、2010年からの実導入に向け実証実験を日本アパレル産業協会が進めています。
とはいえ、日本コパックのハンガーリサイクル事業は、立ち上げ初年度は2億円、次年度は1億の赤字との事で、収益だけを考えては、事業の継続はなかったでしょう。それでも継続されたのは、立ち上げのきっかけともなった斎藤社長の「志」でしょう。
日本コパックによると、事業が継続できる形になったのは、従来、縫製工場の生産用ハンガー、アパレルの物流用ハンガー、百貨店の陳列用ハンガーと3種類あった百貨店のハンガーを、アパレルが納品したハンガーをそのまま陳列用に採用する事で一つに纏めた百貨店の英断だったとの事です。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます