新型インフルエンザの発症者が休業することは事業運営上とても大切な取り組みです。 しかし、発症者との接触のあった社員を全て休業にすることは本当に可能なのでしょうか?
前回は、休業と賃金の支払を考えるためのガイドラインを掲載しましたが、その内容から派生する「休業」の抱えるリスクを考えます。
まず、もっとも悲惨なAさんのケースから。
①職場でインフルエンザ発症者が出て、隣の席のAさんは1週間業務命令にて自宅待機。
②発症せずに復帰直後、お子様が発症したため、人事の判断で1週間の業務命令による自宅待機。
③また発症せずに復帰後、訪問先企業から窓口社員のインフルエンザ発症の連絡を受けて、人事の判断で1週間の業務命令による自宅待機。
④10月になり人事異動によって部署が変わり、異動先の他の社員のインフルエンザ発症に伴い、部署全員が1週間自宅待機。
⑤10月下旬に、自身のインフルエンザ発症により1週間の休業。
さて、この場合、5週間に渡る自宅待機と休業が行われるわけですが、もしこれが無給だと判断されれば、生活ができません。
そして、無給となれば、派遣社員、契約社員、パート・アルバイト従業員は有給休暇を持たないケースが多いため、多少の体調不良は我慢して働き続けることになります。当然のこととして発症直前まで勤務することになります。
感染症は、発症するまでは、感染しているかどうか判断することは困難ですし、24時間テレビのように熱が出ていてもスケジュールにあわせて行動(出演)するでしょう。また、感染初期の潜伏期間であれば、抗体検査をしても陰性となってしまいますので、感染を完璧に防ぐことはとても困難です。
また、在宅勤務を考える場合は、業務の見直しと会社が抱えるリスクを総合的に考えてから判断するのですが、労務管理の観点が抜けているままに「ITツールを入れれば在宅勤務ができます」という企業が多い現状ですから、企業の人事・総務部門の方々には慎重に判断頂きたい(導入するのもしないのも)と考えるわけです。
BCP策定においても、無給休業の抱えるリスクを考えれば、BCP策定に費用をかけるよりも「人件費の確保」を優先させるべきですし、米国・英国のリスクコンサルティングの会社では「内部留保」の確保を第一とするアドバイスを行っています(米国・英国の企業はBCP策定を終えている企業が多いためというのもありますが、社員の生活を守れずに事業継続を守るということは難しいわけですから、BCPが未策定であっても、一先ずインフルエンザが収束するまではBCP策定にかける費用を社員に向けて頂きたいものです)。
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