ビデオリサーチの新技術導入は、テレビ業界の悪あがき?

2009.02.10

営業・マーケティング

ビデオリサーチの新技術導入は、テレビ業界の悪あがき?

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

テレビ視聴率調査の「ビデオリサーチ」は、これまで集計できなかった「録画による視聴率」を測定できる装置を開発したというニュースが先日流れた。 何故?今更?この時期に?素直に考えて・・・疑問なのである。

であるなら、たった「1%の視聴率」に一喜一憂するテレビ制作の現場とは何か?
過去に日本テレビの編成局のプロデューサーが、探偵業社を使って視聴率の不正操作を行った事件があったが、その職を賭けてまでの不正行為で操作できた視聴率は、せいぜい1%だったという。そんなの、誤差の範囲ではないか・・・バカらしい。

そして、この「録画による視聴率」の加算も、せいぜい誤差範囲に収まる程度のものではないかと思う。
さらに、番組途中のCMタイムは、リモコンによるザッピングで視聴率が落ちる。ましてや、録画した番組のCMに影響を与えられる人などいないのではないかを考え合わせると・・・今回のビデオリサーチの新測定器導入のニュースは、あまりに虚しい。ビデオリサーチの株主が民放各局であるわけだから→このニュースは、「民放各局は、絶対、視聴率にごたわります」という宣言に聞こえる。

「録画による視聴率」なんて測っても、テレビ凋落の根本的な問題の解決には至らない。世間の感覚とはズレた議論である。
いまテレビ各局が議論するべきことは、「くだらない番組が増えた」→そんな批判に素直に耳を傾け、普通の感覚を取り戻すことだと思う。
オンタイムの普通の視聴率が上がるための常識的な議論なしに、「録画による視聴率を加算して」広告の営業をされてもいかがなものか?

非常に困難で、リアルな議論ではないのかもしれないが・・・。民放が集まって視聴率調査の会社=ビデオリサーチを運営しているのなら、そろそろ、視聴率以外の有効な質的評価基準を確立する手立てに智恵を集めた方がよいと思う。CM=広告を営業する上で、視聴率以外に客観性をそなえた基準がない現状を打破することに投資をすることが、民放の新たなビジネスモデルの確立にも繋がるはずだ。

広告主は、視聴率一本によるCM取引を卒業したいと考え続けてるはずだ。一面的なものではなく、もっと多角的な指標を、公正一律に測定される新システムこそ、考えるべき測定システムではないか。

ホームページのURL表示の規制をいまだに外せず、録画による視聴率測定に躍起になる。そんな悠長な場合ではないだろうと・・・世間のみんなは、そう思っているはずだ。それが、世間の常識である。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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