近年、力士の大型化が急速に進んだのは、 体の大きな外国人力士の影響だと言われています。 現在はタレントとして活躍しているKONISHIKI、 つまり、ハワイ出身の「小錦」は新入幕時から200キロを越す 体躯で活躍し、無差別級の相撲における 「体格」 の優位性をまざまざと見せつけましたよね。
しかし、最高体重283キロまで増えてしまった小錦は、
タクシーに乗ればタイヤがパンクし、飛行機のトイレには
体が大きすぎて入らないため用が足せないなど、日常生活
にはいろいろと不便があったそうです。
前回説明したように、
相撲という特殊なスポーツで上位を目指すために、
多くは中卒で相撲界に入り、「相撲部屋」という一般社会とは
全く環境の異なる世界で暮らして体を巨大化させる力士は、
引退後のキャリアチェンジが容易ではありません。
このため、一定以上の成績を上げ、
大相撲の隆盛に貢献した力士に対しては、
引退後も手厚い生活保障が提供される仕組みになっています。
それは
「年寄制度」
です。
これは、「年寄株」を取得することにより、
引退後も日本相撲協会に「親方」として残ることが
できる仕組みです。
「年寄株」は正確には、
「年寄名跡(みょうせき)」
と呼ばれています。定年は65歳です。
したがって、力士が30代前半で現役を引退して
年寄株を取得すれば、65歳の定年までの約30年間に
わたって給料をもらい続けることができます。
(幕内力士の平均引退年齢はおよそ32歳だそうです)
年寄にもランクがあります。
相撲協会内でがんばって働けば、
平年寄→主任→委員→監事→理事
と出世していくことができます。
年収は、平年寄では1千万円強ですが、
理事になると2千万円を超えます。
『大相撲の経済学』では、
上記の「役職」はおおむね年齢とリンクしていることが
指摘されており、出世の条件としては、
「年功」
の占める要素が大きいようです。
さて、年寄たちに与えられる十分な報酬は、
言うまでもなく、相撲興行から得られる収益から
分配されるもの。
つまり、大相撲界全体としてみれば、
現役力士たちが、引退した年寄たちの生活を支える
構図です。
「年金」を連想しますね。
もちろん、年寄たちは年金生活をしているわけではなく、
自分の相撲部屋を持って若い力士を育成するなど、
日本相撲協会の一員として様々な業務を遂行していますから、
いわば一般企業における
「終身雇用制度」
と同様の仕組みが確立されていると言えるわけです。
(終身雇用制度の枠組みには入れるのは、ごく一握りの
力士に限られる点がプロスポーツの厳しい現実ですが)
一般企業における終身雇用制度は崩壊しつつありますよね。
しかし、キャリアチェンジが容易でない大相撲の世界では、
大相撲の隆盛に貢献できる有望な新力士を呼び入れるためにも、
生涯にわたる生活保障を維持する必要があります。
次のページ年寄株の取引の実態は明らかではありません。
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大相撲の経済学
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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。