大相撲界は、一つの大きな会社組織のようなもの。 別の言い方をすれば、「運命共同体」です。
「部屋同士の戦い」
なのです。
ですから、強い力士の数に応じて
相撲部屋にインセンティブが与えられる現状においては、
「部屋別総当り制」
が最も合理的な仕組みと言えるわけです。
なお、強い力士を育てることは相撲部屋の仕事であり、
相撲協会自体は育成にはかかわりません。
したがって、相撲協会が、
強い力士の数に応じて部屋にインセンティブを
与えることも経済合理性に適っています。
さて、もうひとつ競争制限的な仕組みを説明しましょう。
力士は、入門する相撲部屋は選べますが、
その後は自分の意思で他の部屋に移籍することはできません。
つまり、
「フリーエージェント」
の権利を現役力士は持っていないのです。
なぜ、移籍の自由が認められないのでしょうか。
それは、もし移籍が自由化されれば、
相撲部屋の親方は、有望な弟子を手間暇かけて
育てるよりも、番付の高い人気力士を金の力で
スカウトしようとする可能性が高いからです。
そうなると、資金力に勝る部屋にばかり強い力士が
偏ることになりますよね。
(現在も、現役時代に人気が高かった力士が親方と
なっている部屋に有望な力士が集まる傾向はありますが)
前述したように強い力士がいる部屋ほど、
相撲協会から多くの補助金が入るため、
移籍自由の世界では、特定の部屋がますます
強大化していくことになります。
こうなると、1強○弱みたいになってしまい、
「部屋別総当り制」
における取組はまるで面白みのないものになるでしょう。
(強い力士同士の迫力ある取組が減少するから)
このあたりの弊害がもろに顕在化しているのが
現在のプロ野球ですよね。
以上述べたように、大相撲界の場合、
伝統文化の名の下に力士本人の自由度が
かなり限定されているのですが、
大相撲界全体
の繁栄・存続のためには、
実に合理的な仕組みではあるのです。
ただ、親方の性格や、
それぞれの相撲部屋が持つ固有のルールや社風(部屋風?)と、
所属する力士との間の「合う・合わない」、つまり
「相性」
の問題が、一般の会社と社員との間と同様、
発生するでしょう。
ですから、他の部屋に移籍できないことが、
有望な力士の成長をつぶしてしまったり、
不祥事の種になる可能性を秘めていますよね。
『大相撲の経済学』
(中島隆信著、東洋経済新報社)
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大相撲の経済学
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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。