パートナー、共演者、上司、監督、スポンサーとしてのお客様について引き続き考えてみたい。
企業競争は顕在的欲求の満たし合いから、潜在的欲求の満たし合いという不毛な競争を経て、潜在的欲求を顕在的欲求に変える競争へと行き着く。
例えば、誰もが知っている野菜を業者が農家から大量に仕入れて、農家が直接販売するよりも安く販売するとする。これは顧客の顕在的な欲求を満たす活動である。顧客が味も形も知っている野菜を通常よりも安く売ってくれるのである。顧客は喜ぶことだろう。
しかし、どの業者も大量仕入れによって、販売を競い合うようになると、価格競争に陥り、業者にとってほとんど利益が出なくなってしまう。
そこで今度は、例えば、有機野菜を仕入れて販売する業者が現れる。しかし、売れない。通常の野菜よりも高いし、有機野菜の価値が顧客に理解されないからである。
通常の野菜と見た目が同じで、価格が高いのであれば売れなくて当然であろう。顧客の「健康志向」という潜在的欲求を狙っても顧客にとって「健康志向」という欲求が顕在化していない場合や、有機野菜が健康に良いという認識が顧客になければ、有機野菜は売れない。
別の業者は、そのまま調理出来るように特定の料理向けの食材として野菜をある程度加工して販売するかも知れない。また、別の業者は健康食としてレンジで温めれば食べられる調理済みの料理を店頭販売、あるいはディリバリーによって販売するかも知れない。
しかし、食材としての使いやすい加工も、主婦などに「便利だ」、あるいは「コスト効率が良い(手頃だ)」と思われなければ売れないだろう。
また、健康に良い料理の店頭販売やディリバリーも、自宅での調理で実現出来ない「味」、「便利さ」、「コスト効率」がなければ売れないだろう。ピザ、お弁当、お寿司など、通常の出前との差別化も必要だろう。
上記のような顧客の潜在的欲求に対するビジネスはそのままでは成功しない。顧客の潜在的欲求を顕在的欲求に結びつける必要がある。
顧客は見たことのあるもの、聞いたことのあるもの、味わったことのあるもの、経験・体験したことのあるものを求める。
潜在的欲求を欲求として顕在化させるためには、第一に欲求の目的(顧客便益)に着目する必要があるだろう。例えば、顧客の欲求の目的が「空腹を満たすこと」である場合と「安全で安心な食べ物で空腹を満たすこと」である場合、あるいは、「美味しくて、安全で安心な食べ物で空腹を満たすこと」である場合では、顧客の欲求の対象が異なる。
顧客の欲求の目的が純粋に「空腹を満たすこと」である場合、割高な有機野菜は選択の対象にはならないだろう。また、「美味しくて、安全で安心な食べ物で空腹を満たすこと」が目的である場合でも、栽培方法上の制約から味や見栄えに課題がある、少なくとも、大量生産が困難な分、選択の余地の限られる有機野菜は適当ではないかも知れない。
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