顧客ニーズと顧客の欲求について考えてみたい。
マーケティング用語である「ニーズ」とは、人が感じる不足感である。例えば、お腹が減った、眠い、専門スキルを身につけたいという満たされない感情や感覚である。これら対して、欲求(ウォンツ)とは、ニーズを満たす具体的な対象に向けられる。例えば、マクドナルドのビックマック、リッツカールトンの宿泊パッケージ、あるいは、べルリッツの英会話レッスンを望むことである。
「顧客ニーズをつかむ」というビジネスにおける合言葉が意味するものは「顧客ニーズに適合する製品・サービスを提供すること」、「顧客ニーズを自社製品・サービスの購入という具体的ウォンツに結びつけて、顕在化すること」である。
どうしたら顧客ニーズが具体的な製品やサービスに対する欲求が結びつくのだろうか?基本的なデザインや見た目などの特徴が顧客の好みに合っていること、あるいは、顧客の嗜好に反しないこと、必要な機能が備わっていること、または、最低限の機能が装備されていることなどが、重要であろう。
しかし、これらの基本的な要素を押さえても、顧客ニーズと顧客の具体的な欲求を結びつかない。
顧客ニーズを捉えると言いながら、結局のところ、顧客の嗜好の流れを読むこと、市場動向の規則性を理解することなど将来を予測する作業、あるいは市場の不規則性や偶然性を理解して新しい流行を作り出す創造性が必要になる場合も多いようである。
既存の製品・サービスに対して相対的に優位な製品・サービスを提供すること、顧客の経験・価値観に適合する製品・サービスを提供すること、分かりやすいこと、使いやすいことなどが基本的に求められる。しかし、それだけでは顧客ニーズは具体的な欲求と結びつかない。
顧客の欲求を顕在化するための最低限の特徴や機能を満たした上で、製品・サービスに付加価値を持たせる必要である。月並な言葉で言えば、製品・サービスを差別化する必要がある。
高い品質を約束しても、製品・サービスが不完全な場合もあるし、数ヶ月後には新製品が、より安い価格で発売されたりする。販売時点では「完全」に近い製品であっても、数ヶ月経てば完全とは言えない製品・サービスばかりである。
そんな決して完全ではない製品・サービスに価値を持たせるのは、生産者、サービス提供者の意志、熱意、誠意などから生まれる個性の輝きであろう。それは意志、熱意、誠意自体ではない。生産者やサービス提供者の個性の輝きと顧客の時間限定的な需要が適合した時に顧客ニーズはウォンツに変わるようである。
【V.スピリット No.36より】
V.スピリット総集編2
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