数年前の納期トラブルを機に始まった週次の報告が、読む会議がなくなった今も毎週作られています。そんな職場の経営者や管理職に向けて、仕事が減らないわけを担当者の判断力に求めず、会社の物事の決め方の側から読み解きます。新しい仕事には言い出す人と期日があるのに、やめるかどうかを判断する人と日は誰とも決まっていないことがあります。いま続いている報告から一つ選んで見直す手順と、新しく始めるときに添えたい一言を示します。
毎週届く報告を開いて、「これは、いま誰が読んでいるのだろう」と思ったことはないでしょうか。
仮の例で考えてみます(この記事の例は、どれも複数の支援経験を組み合わせた仮のものです)。
ある職場では、数年前に起きた納期トラブルを機に、週次の進捗報告が始まりました。担当者は毎週、先週の数字をまとめ、納期に響きそうな案件を現場に問い合わせて、報告を共有フォルダに置きます。
トラブルはとうに収まり、報告を読み合わせていた会議もいつのまにか開かれなくなりました。それでも、作る作業だけは毎週続いています。
仕事が減らないと聞くと、作業のムダを削る工夫に目が向きがちです。けれども、その前に決まっていなければならないことがあります。
この報告をやめるかどうかを、誰が、いつ判断するのか。
それが誰とも決まっていないという、会社の物事の決め方の話です。
私は職場の困りごとを見るとき、表に出ている不調と、その背後にある仕事の分担や物事の決め方を、分けて考えるようにしています。今回の不調は「仕事が減らない」こと。その背後にあるのは、やめる判断の決め方です。
■人は、減らす案を見落としやすい
2021年に英科学誌ネイチャーに載った、アダムズ氏らの研究「People systematically overlook subtractive changes」があります。これによれば、一連の実験で、引く案のほうが有利になるように作られた改善の課題でも、人は足す案を先に探しがちで、引く案を見落としやすかったといいます。
ここからは私の見立てですが、職場ではこの見落としやすさに、もう一つの事情が重なります。誰かが「この報告は要らないのでは」と思いついても、それを受け止めて判断する人がいません。始めた人、読んでいた人、作っている人のうち、誰が決めるのかがまず分からないのです。
報告や会議が積み上がるのは、見落としやすさと行き場のなさが重なったときだと考えています。
■始める仕事には言い出す人がいて、やめる判断には決める人がいない
支援の現場で見てきた限り、新しく始まる仕事には、たいてい言い出した人と始める日があります。「来月から毎週出してください」と誰かが言い、その日から仕事が生まれます。ところが、やめるかどうかについては、言い出す役も判断する日も、誰とも決まっていないことがよくあります。
作業の手順を見直す業務改善とは、ここが違います。手順をどれだけ磨いても、やめるかどうかを決める人がいなければ、仕事そのものは残りやすくなります。
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2009.02.10
2015.01.26
株式会社DroR 代表取締役CEO
フクシマガリレイ株式会社(現 ガリレイホールディングス、東証プライム上場)を経て、2023年に株式会社DroRを創業。組織開発の実務に4年携わり、従業員50〜300人規模の企業で経営層・人事・現場のあいだに入り、意思決定の詰まりなど職場の問題を組織の構造から読み解いている。共著論文が2026年に査読誌Frontiers in Psychologyに掲載された。
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