精密金属材料メーカー・特殊金属エクセルは創業以来、常に日本の先端産業が必要とする素材を提供してきた。同社はいま実に5万を超えるスペックを有し、更には製品を極少ロット対応で納期通りに提供する体制に向け全社取り組み中である。危機を乗り越え、奇跡的なシステムを実現した同社のイノベーションプロセスを谷口取締役に伺った。
確かにバランススコアカードはさまざまな指標を持ち込むことで、従業員一人ひとりにまで経営参画意識を持たせる絶好のツールだ。しかし数字の精緻化を追求しすぎると項目がやたら複雑になってしまうリスクもある。スコアカードの数値をよくすることが目的化すると、本来の業務効率が却って落ちる。そんな本末転倒状態に陥る企業もある。
「バランススコアカードが持っているリスクも十分に認識していました。しかも当社は工場で現業に携わる従業員がほとんどです。いかに彼らにわかりやすく、またモチベーションを高める励みとするかにポイントを絞りました」
特殊金属エクセルは各事業部が10個の項目をリストアップし、それだけの指標で活動をチェックする仕組みを作り、経営の視える化を促進するとともに、全員参画型の経営スタイルを構築するまでにいたったのだ。
「以前にも工場内に目安箱を置いて、改善提案はもちろん不平、不満と何でも良いから投稿を呼びかけたことがありました。ところが何度やっても結果はゼロ。状況は深刻でしたね。本来なら不平がまったく出ていないなんてはずがない。何も出てこないのは、しょせん何を言っても無駄というあきらめムードが充満している証拠だからです」
そこで現場からの提案とその対策状況を視える化した「困り事提案」を進めた。谷口氏は良い提案は必ず採用し、そのためなら会社をがお金をかけることを諄々と説いてまわった。最初は疑心暗鬼だった従業員たちもやがて会社の本気度を理解するようになり、そうなると堰を切ったように提案が寄せられるようになった。
「いまや現場がさまざまな改善ツールをどんどん創っています。それぐらいコミュニケーションが活性化してきました。工場内も見違えるほどキレイになっています。埼玉工場での2S(整理・整頓)、段取り改善など、生産の現場からスタートしたイノベーション活動も、いまや他工場や他事業所へ、生産部門から全社へと拡がっています。たとえば私たちの改善活動では、本格的に改善提案制度を導入した2006年6月から2007年9月末までに1,824件の提案があり、これまでに提案から生まれた成果は、なんと月間約1,000万円にものぼります。」
昨年から同社は各事業部間でのコミュニケーションをとるための部門横断的な「特金イノベーションサークル」を組成し、オフサイトミーティングの企画・運営をおこないはじめた。これは各事業部が個別最適を求めるステップを終了したことを意味する。今後は事業部間の風通しをよくしながら全体最適をめざすステップに入ったのだ。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
FMO第7弾【株式会社特殊金属エクセル】
2008.04.28
2008.04.22
2008.04.15
2008.04.08