精密金属材料メーカー・特殊金属エクセルは創業以来、常に日本の先端産業が必要とする素材を提供してきた。同社はいま実に5万を超えるスペックを有し、更には製品を極少ロット対応で納期通りに提供する体制に向け全社取り組み中である。危機を乗り越え、奇跡的なシステムを実現した同社のイノベーションプロセスを谷口取締役に伺った。
第一回
「売上前年対比40%減」
■5万スペックもの製品を異例の少ロット対応で
「高炉メーカーから特殊鋼やステンレンスなどの原材料を購入し、それに何らかの加工を施し、顧客が求める幅にカットして納品するのが我々の業務です。原材料のロットを考えれば通常は、発注もそれなりのロットでお願いすることになりますが、当社は100キロぐらいからの対応もおこなっています。これが当社の強みの一つでしょう」
特殊金属エクセルは精密金属に特化した素材メーカーである。同社の製品は電子機器や自動車などのパーツに使われる素材だ。特殊鋼やステンレス、銅などの原材料を仕入れ、顧客の要望に応じて加工した上で提供する。材料の厚みや強度などをオーダー通りに冷間圧延して紙より薄く仕上げたり(冷延材)、あるいは複数の素材を貼り合わせたり絶縁加工した上で(複合材)、最終的にはすべて求められる幅に切りそろえて納品する。
「素材の厚みなら10ミクロン(1/100mm)まで対応もしています。これぐらいの薄さで誤差は±2ミクロン程度に抑えなければなりません。しかもその幅を3ミリぐらいにして納品して欲しいといったオーダーが入ります。こうしたオーダーに応え続けた結果が、5万を超えるスペックを有するまでに至ったのです」
顧客の生産ラインは各社固有であり、同じ顧客であっても製品ごとにラインが異なる場合もある。ラインが変われば、素材に求められる幅も異なってくる。出荷前に必ず切断作業が必要となるのはそのためだ。
「冷間圧延した素材の幅はだいたい330ミリぐらいです。これを2.5ミリぐらいの幅にカットして納品して欲しいというお客様もおられます」
このオーダーに応えるためには、一本のロールとなっている素材を120以上に細かく切り分けていかなければならない。しかも一本ごとの幅の誤差は0.05ミリ以下に抑えなければならない。同社コイルセンターが担当する切断作業はまさに職人技の境地である。
「これまでは完全に職人の手技の世界でした。とはいえ、いつまでも熟練工のカンと経験に頼っているわけにはいかない。そこでいまベテランの暗黙知を形式知に変換する作業に取り組んでいます」
■すべては「すり合わせ」から始まる
特殊金属エクセルのメイン製品は、冷延材と複合材の二つがある。冷延材事業は同社が創業以来手がけてきた中核事業である。
「厚みはミクロン単位でオーダーが入ります。ただし強度は厚みによって変わるため製品ごとにベストな厚み・強度を出すためには、事前に顧客との綿密な『すり合わせ』が必要です。保有する精密切削、表面改質、ハンダ処理、制御圧延、冷間接合などの加工技術を組み合わせることで、これまで5万を超えるスペックの材料を製造しています。」
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FMO第7弾【株式会社特殊金属エクセル】
2008.04.28
2008.04.22
2008.04.15
2008.04.08