精密金属材料メーカー・特殊金属エクセルは創業以来、常に日本の先端産業が必要とする素材を提供してきた。同社はいま実に5万を超えるスペックを有し、更には製品を極少ロット対応で納期通りに提供する体制に向け全社取り組み中である。危機を乗り越え、奇跡的なシステムを実現した同社のイノベーションプロセスを谷口取締役に伺った。
最終回
「摩訶不思議な注文もこなせるメーカーに」
■薄くて軽くて丈夫で粘りのある金属が欲しい
「おかげさまで最近は、いろんな変わったオーダーが入るようになってきました。薄くて頑丈で、粘りも出してほしいとか。普通に聞くとあり得ない注文ですよね(笑)」
どんな相談を受けても、そんなの無理、とは決していわないのが同社のポリシーである。難題を突きつけられた時ほど、何とか解決してやろうとチャレンジスピリットを奮い立たせるスタッフが揃っている。特に複合材に多いこうした新素材開発はたいてい顧客との共同作業となる。すり合せが頻繁に行なわれる。
「製品化まで時間がかかるケースが大半です。時には最終製品がどうなるのかさえ教えてもらえないケースもある。そこでいま開発スタッフに説いているのが、提携するパートナーの見極めですね」
マーケットを見て仕事をする姿勢が、たとえ素材メーカーといえども重要な時代なのだ。仮に携帯電話用パーツの素材開発といった話が複数のメーカーから飛び込んで来たとしよう。その中のどこと組むのがベストなのか。つい先日、三菱電機が携帯電話からの全面撤退を表明した。もし同社が三菱に連なるパーツメーカーの素材開発に関わっていたとしたらどうなるか。
「勝ち馬に乗れ、といういい方はあからさまに過ぎるのかもしれません。だからといって我々のような規模では、あらゆる開発案件に対応できるだけの体力もない。そこでポイントとなるのが、エンドユーザーの動きまでをきちんと見ておくことでしょう」
試作品は確かに明日のメシの種である。だから現場も試作品制作には細心の注意を払い全力で取り組む。とはいえ、試作品ばかりを作っていては今日のメシを食べられなくなる。
「がんばって試作したものが、いつまで待っても量産に入らないとなれば現場のモチベーションは下がりますね。だからこそ、いざ量産となればそれなりのスケールメリットを出してくれる相手と組みたい」
顧客を、顧客の顧客を、さらにはエンドユーザーを見る目が素材メーカーにも求められる時代なのだ。
■経営の視える化とバランススコアカード
実は特金イノベーションをスタートさせる前に同社は、バランススコアカードを導入している。2003年から事業部制を導入し、事業部ごとに採算性を厳しくチェックする体制を取った。
「採算性を計るためには何らかの指標が必要。そこで巡り会ったのがバランススコアカードでした」
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FMO第7弾【株式会社特殊金属エクセル】
2008.04.28
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