精密金属材料メーカー・特殊金属エクセルは創業以来、常に日本の先端産業が必要とする素材を提供してきた。同社はいま実に5万を超えるスペックを有し、更には製品を極少ロット対応で納期通りに提供する体制に向け全社取り組み中である。危機を乗り越え、奇跡的なシステムを実現した同社のイノベーションプロセスを谷口取締役に伺った。
第三回
「ターゲットを絞れ、キーマンを口説き落とせ」
■絞り込んだターゲットでいかに早く成果を出すか
「OJTソリューションズさんからは二人の指導員が来られました。その第一声で尋ねられたのが、我々の目標でした」
高い指導料を出して改革に取り組むとなれば、当然それなりの成果を期待する。ましてやただでさえ忙しいラインから二人もの人員を引き抜いてプロジェクト専従にあてているのだ。欲が出るのも無理のない話である。
「在庫削減、生産性向上、利益アップなど目標は当然いくつも出てきます。そこでさすがと思ったのは、指導員のひと言でしたね。改革に弾みをつけるためには、とにかく一刻も早く目に見える形で成果を出すことが絶対条件だ。だからターゲットは徹底して絞り込む。一つのラインにに絞り込んで、目標も自らが設定し、確実に達成しろと」
指示を受けた谷口氏は冷延材事業部の一つのラインをターゲットと定め、そこで集中的な改善作業を始めた。御多分に洩れず汚れ放題だったラインに社員が日参し、掃除を徹底し機器を磨き上げた。
「まわりが汚れている分、そのラインの整理整頓ぶりはおかしいぐらいに目立ちました。すると現金なもので、今まではまったく知らんふりしていた従業員がちらちらとこちらを見るんですね。これも一種の『視える化』であり、集中する効果なんだと納得でした」
ある時、指導員は技能者がライン稼働時に設備を監視している様子を見て、付加価値を生まない作業はムダ極まりないと話しだした。
「これにはベテランが即座に反発しました。トヨタでは監視はいらないかもしれないが、うちはこれでずっとやってきているんだ。監視をして何が悪いんだ、と。実はこうした反論が出ることも計算済みでした。改革にレバレッジを効かせるためのキーパーソンを見つけることが隠された狙いだったのです」
改革に対して反発し、しかも声が大きい人間こそが実はキーパーソンである。たいていはベテランであり技術力が高く、現場に対する影響力も強い。そうした人物ほどこれまでのやり方に自信を持っているため、新しいやり方への変更に抵抗する。逆にいえば、この人物を口説き落としてしまえば、改革は一気に進むわけだ。
「彼は技術がわかるだけに合理的に説明すればきちんと理解してくれる。あとは心情面でいかに納得してもらうか。ここがOJT社のノウハウでもある。指導員の方はオフィシャルな時間だけでなくあらゆる機会を活用して、彼とのコミュニケーションを図っていました。ありきたりな表現でしかないけれども、最後は人間、話せば必ずわかる。そんな信念を感じましたね」
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FMO第7弾【株式会社特殊金属エクセル】
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