コーポレートガバナンス・コードの外形的成果、特に上場企業における社外取締役の割合の増加具合は目覚ましいが、ガバナンスの実態は心許ないと言わざるを得ない。そこにはいくつかの明白な壁が存在している。
1. 形式的な「合格」と、実態の「乖離」
日本の上場企業において、取締役会の風景はここ10年で劇的に変化した。2015年に導入されたコーポレートガバナンス・コード(CGC)は、日本企業の内向きな経営体質にメスを入れ、透明性の高い監督体制を構築することを目指した。その象徴ともいえるのが社外取締役の増員である。
東京証券取引所の集計によれば、東証プライム上場企業の98.8%が3分の1以上の社外取締役を確保しており(2025年時点)、過半数に達する企業も珍しくなくなった。外形的には、金融庁や東証が描いた「ガバナンス改革」のシナリオは着実に進展しているように見える。しかし、その内実を問うとき、我々は一つの冷徹な現実に直面せざるを得ない。
それは、社外取締役が質・量ともに拡充されたはずの「ガバナンス先進企業」において、経営の失敗や不祥事が後を絶たないという事実である。それどころか、近年の不祥事はその規模、深刻さ、そして根深さにおいて、以前よりも増大している感すらある。
2. 「ガバナンス先進企業」でなぜ不祥事が起きるのか
近年、世間を騒がせた事例を振り返れば、その矛盾は明らかだ。紅麹問題に揺れる小林製薬、長年にわたるガバナンスの機能不全が指摘される日産自動車、そしてカリスマ経営者のパワハラ体質に起因する子会社の不正処理が幾つも露呈したニデック。これらの企業はいずれも社外取締役を数人抱え、体制としては平均以上に整っていたはずである。
特に、取締役会の過半数を社外取締役が占める「指名委員会等設置会社」であっても、巨大な不祥事を防げなかったケースは多い。ここから導き出される結論は一つである。すなわち、「社外取締役の数・割合」と「ガバナンスの質」には、必ずしも正の相関関係がないということだ。
CGCの本来の狙いは、社内権力者である社長や会長に対し、忖度なしに「物申す」存在を置くことであった。しかし現実には、経営陣に対し適切な「監督」を行うどころか、建設的な「助言」すらできず、単なる「追認機関」の一部と化している社外取締役が少なくないのではないか。
3. 「お友だち」と形式主義の横行
なぜ、社外取締役が機能しないケースが後を絶たないのか。その最大の要因は、選任プロセスにおける「形式主義」にあると思われる。
多くの企業において、社外取締役の選定基準はいまだに不透明だ。経営トップが自身の意に沿わない人物を避ける結果、かつての知人や「お友だち」を連れてきて席を埋めるケースが後を絶たない。あるいは、世間体を取り繕うために、著名な経営者や、会計士・弁護士といった「士族」と呼ばれる専門家、さらには元官僚などを揃えることで「格好をつける」ことに腐心している。こうした話をよく耳にする。
経営・事業戦略
2025.08.18
2025.09.17
2025.09.24
2025.10.20
2025.11.12
2025.11.19
2026.01.16
2026.02.11
2026.04.16
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け39年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅第二創業期の中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』を主宰。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
フォローして日沖 博道の新着記事を受け取る