米ビジネスウィーク誌4月28日号の特集記事は、ずばり、『世界で最も革新的な企業』。グーグル(2位)、トヨタ(3位)、アマゾン(11位)などが上位にランクイン。さて、新しいキーワードは、「顧客エクスペリエンス」・・・。
また、理詰めの評価ではなく、「感情」や、「フィーリング」や、「アフィニティ(親近感)」など、人間の本質的なところに密接に結びついているのも、「顧客エクスペリエンス」の特徴のひとつです。この点で、「顧客エクスペリエンス」は、「顧客満足」とは大きく異なります。「顧客満足」とは、期待と現実とのギャップ、つまり、比較の問題ですね。正価が200円のものを100円で買ったとき、人は「満足感」を感じますが、必ずしもこれが「優れた顧客エクスペリエンス」かというと、そうではない。「顧客エクスペリエンス」は総合評価ですから、単に安い価格を提供するだけでは、「優れた顧客エクスペリエンスを提供した」ということにはならないのです。逆に、仮に高いものを売っても優れた顧客エクスペリエンスを提供することは可能です。
例えばアマゾンは、ITを梃子に、優れた顧客エクスペリエンスを創造する「仕組み」を確立している。それがすごいところですね。
すべてのもののコモディティ化が進む市場では、「顧客エクスペリエンス」こそが、企業にとって「唯一残された差別化要因」だ、と言う人もいます。「顧客エクスペリエンス」は、定義が難しいからこそ、仕組みづくりが難しく、従って、革新の対象とすることも難しいのだといえるでしょう。「顧客エクスペリエンス」という仕組みの中に、いかにして、感情、フィーリング、アフィニティといった無形の要素を組み入れるか、そして、それをどう革新するか。それが、今後、企業にとって見落とすことのできない課題になっていくと思います。
ところで、この、「世界で最も革新的な企業」の特集号の表紙を飾るのは、アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾスの横顔です。今日、アメリカのビジネス界で、「革新」を象徴する人といえば、やはりベゾスの右に出るものはいないでしょう。ずばり、「革新について」と題したインタビュー記事の中で、ベゾスはこう語っています。
「革新に適さない時期なんてない。会社がうまく行っている時も、そうでない時も、常に革新に投資すべきだ」
1996年から2002年まで、多いときには年間14億ドルという損益を出しながらも、アナリストの批判にもひるまず革新への投資を続けたベゾスの口から出る言葉。重みがあります。
また、「『顧客中心主義』を口先で唱えるだけでなく、実践できる会社がごく稀なのはなぜか」という質問に対しては、次のように答えています。
次のページ常に、『顧客が何を望んでいるのか』を出発点とすること。...
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革新
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ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。